憧れの鍵っ子
Twitter300字SS第65回お題「鍵」より(300字、改行含まず)
鍵っ子に憧れた時期がある。
自分が小学生の頃は専業主婦の母親も多い時代で、自分の母も在宅勤務で常に家にいた。故に家の鍵を持ち歩いた覚えがない。
だから首から鍵をぶら下げたり、ランドセルのサイドのフックに鍵をぶら下げたりする姿に憧れたものだ。今では防犯上よくはないだろうが、当時は羨ましくて仕方がなかった。何だか大人のように思えたのだ。鍵を託されて、家の扉を自由に開けられるなんて大人のようだと。
特に都会からの転校生が鍵っ子だったことも、その憧れに拍車をかけた。その子のランドセルにはいつも孤高の鍵っ子たる証がぶら下がっていた。
その証が、実は寂しさの証明でもあることを知ったのは、ずっと後になってのことだ。
【了】
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