咲かぬなら
Twitter300字SS第52回お題「咲く」より
(300字、改行・スペース含めず)
「咲かせてみせます、必ず」
そう力強く頷く彼の目は春空と同じ色をしていた。
彼が託されたのは、かつてこの国で最も愛された花。その唯一残った原木だった。
この国に人の姿が絶えて既に久しい。それでもいじらしく咲き続けていた花だったが、寿命が尽きたのか、それとも愛してくれる人がいなくなったせいなのか、ある時を境に皆悉く枯れ果ててしまったという。
奇跡的に発見されたこの原木も、枯れ木のように細く弱々しい姿で、葉よりも先に目覚める蕾も見当たらなかった。
でも彼には分かっていた。この原木はまだ生きていると。花を咲かせたいと願っていると。
原木に触れた冷たい機械の肌が、自分にはある筈のない鼓動と熱を感じ取っていたから。
【了】
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