童話

いちばんはじめのひとで

Twitter300字SS第32回お題「色」より(300字、改行含まず)


 ある夜、小さな星の子は、夜の海から信じられない話を聞きました。

 この空は夜空以外にたくさんの色を持っているというのです。


「ぼくは朝も昼も夜もずっと空を映すからね。

空の色なら何でも知ってるよ」


 自慢気に海が言うものだから、星の子は面白くありません。

 星の子はお友達の星の色と夜空の色しか知りません。

 朝や昼は眠らなくてはいけないので、他の色を知りたくてもできないのです。


「なら、ぼくのところに流れておいで。

いっしょに見よう。

たくさんの空の色を」


 そうして小さな星の子は、海へ流れ落ちていきました。

 海といっしょにたくさんの色を知った星の子は、今でも空を眺め続けています。

 海の星となって、たくさんの色を体にまとって。


【了】

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