ファンタジー

氷の女帝の涙

Twitter300字SS第29回お題「氷」より(300字、改行含めず)


 かつて「氷の女帝」と呼ばれ恐れられた女性の治めた国があった。

 幼い頃から「女でも強く正しくあれ」と育てられた彼女は、その言葉通り、どんな小さな悪でも許すことなく、間違いを犯した者を捕らえては、例外なく斬首に処す冷酷な女帝となった。

 しかし歴史に例外はなく、彼女の所業も民衆の反感を買い、その後反乱によって国は一夜で滅びた。

 諸悪の根元として捕らえられ、民衆の前で斬首となった女帝は、その最期の瞬間まで「氷の女帝」の名に恥じることなく、涙を見せるどころか、その表情すら変えることはなかった。


 ただ異聞として、生き残った女帝の側近の言葉が残っている。

「氷の女帝を解かしたのはただ一つ、亡き夫の求婚の言葉のみ」と。


【了】

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