第104話≪まるで 星に願いを……1≫

新・ここは世田谷豪徳寺6(さくら編)


≪まるで 星に願いを……1≫





「あたしじゃないよ!」


 チェ-ンメールをよこしてきたA子に学校で聞いた、むろん米井さんには分からないように。


 で、A子から、チェーンメールを送ってきた子を聞いて、その子にあたる。そんなことを五回繰り返して、元々の発信者Eにたどり着いた。

 村野美穂という一年のときの同級生だった。三つ隣のクラスにいる美穂に問い詰めたとき、美穂は不思議そうな顔で言った。


「なに言ってんの。最初によこしたのさくらじゃんよ」


 絶句した。


「そんな馬鹿な……」

「だって、ほら」


 美穂が見せてくれた着信履歴は、確かにあたしのアドレスだった。あたしは軽いパニックになった。


「そんな……あたし、こんなの送ってないし。それに自分が写りこんでる写メは、だれか他の人間が撮ったってことじゃんよ!」


「アドレスが盗まれた……考えられないことじゃないけど、なんの得にもなんないじゃん。やっぱ、さくらしかいないよ」


「あたし、こんなことしないもん!」


「そんな、あたしが悪者みたいに言わないでよね!」


 廊下の隅で言いあってたんだけど、ちょうど階段を上がってきた担任の水野亜紀先生に見つかって、相談室に連れていかれた。


「確かに妙ね……」


 一通りの話を聞いて、水野先生は腕を組んだ。


「誰かが、あたしのアドレス盗んだんです!」


「まあ、佐倉さん、落ち着いて……この写真おかしいのよ」


「え、なにがですか?」


 美穂と声が揃った。


「先生ね、学生時代にここでバイトしてたの。フロアもここ。このアングルから写真は撮れないのよ」


「でも、エスカレーターに乗れば、このアングルで……」


「この場所にエスカレーターはないわ。それに端の方にスプリンクラーがぼんやり写

ってるけど、これって、天井にめり込まなきゃ撮れないわよ」


「そんな……」


「……ちょっと二人のスマホかしてくれる?」


 美穂といっしょにスマホを出すと、先生は自分のも出して、なにやら操作した。


「不思議だ……」


「なにがですか?」


「二人のスマホから、このチェ-ンメールをわたしのに送ろうとしてもできないの」


「そんな……!」


 チェ-ンメールってのは、一種のイタズラで、拡散はネズミ算式に増えていくものなのだ。それが一人にしか送れないのは、常識としてありえない。


「ん……こんなのが出てる」


 先生が画面を見せてくれた。


――このメールは、一回送ると無効。メールも写メも問題が解決したら消滅します――


 美穂のメールには、そう書いてあった。


――さくらさん。あなたがゴールです。あなたは転送しないし、転送できないようになってます――


 あたしのメールには、こう書いてあった。美穂もあたしも気が付かなかった。


 先生は他の四人も呼び出して、それぞれのスマホをチェックした。


 四人ともいっしょだった。


 そして、驚いたことには、美穂を含めた全員が、程度の差はあっても、あたしと米井さんの両方を知っていた。一年で、どちらかと一緒だったり、中学で知り合いだったり。


「これは、もう秘密にしない方がいいようね。あなたたちはしばらく、ここで待っていて……」


 そう言うと、水野先生は、五分ほど部屋を開けた。


 そして、米井さん本人を連れて戻ってきた……!

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