第62話《眩しいよ、さくら・2》

VARIATIONS*さくら*62(さつき編)

《眩しいよ、さくら・2》





 満開の笑顔のまま、さくらが毒づいた。


「嘘は、もっとうまくつかなきゃ」

「え……分かっちゃった?」

「十七年姉妹やってんだよ。それにお姉ちゃん、ウソ下手すぎ。ウソ言う前に目線が逃げるんだもん。これからウソつきますって言ってるようなもんだよ」


 そう、あたしはガキンチョの頃からウソは苦手。だから、あまりウソはついたことがない。バレるから言わないだけなんだけど、おかげで「正直者のさつきちゃん」で通ってきた。


「正直言うと、あたしにもよく分からない。大学から、突然日本での資料収集言われたの。ほんとだよ」

「……それは本当っぽいけど、なにそれ、自分でもよく分かんないって?」


 ルームサービスのコーヒーとフレンチパンケーキが来るまで、妹の質問攻めにあった。

 でも、知らないことは話せない。あたし自身半分は分からないままで日本に帰ってきた。


 で、分かっている残り半分も話せない。


 とても信じられない話だから。


「ま、いいや。なんだか言えないようなことに巻き込まれてるような気がするけど。自分でも良く分かんないじゃね。それに家族にも内緒じゃね」

「一つだけ言っとく。行きのエールフランスで、飛行機が墜ちそうになったことは知ってるよね?」

「うんうん。偶然いっしょに乗っていた自衛隊のニイチャンが、見よう見まねで操縦したって。で、上官のオジサンとお姉ちゃんが、コクピットで立ち会ったんでしょ?」

「あれから、少しおかしいんだ」

「ハハ、そのカレにホの字なのかなあ~?」

「そんなんじゃないわよ」

「どうだろうね、あれ『オペレーション コイビト』とかってマスコミは言ってたよ」

「あれは、いっしょにいたアメリカの海兵隊のオジサンが適当に言ったのが、マスコミ受けしただけだよ」

「ま、そういうことにしとこう。オネエはやっぱ日本に居たほうがいいってのが、あたしの持論で、それが多少の謎があっても実現したんだから。良しとしとくよ」


 ちょうど、フレンチパンケーキを食べ終わって、さくらは結論づけた。さくらは子どもの頃から、好きなものを食べると、あとはどうでもいいってとこがあるオメデタイやつだ。ま、それにかこつけて話題を切り上げたのかも知れないけど。


「ね、あたしの出番はおわったけど、はるかさんの撮影残ってんの。見ていく?」

「うんうん!」


 やっとミーハー姉妹に戻れた。


 坂東はるかという女優さんは、やはりオーラが違った。


 連絡橋で吉川裕也というカレに出くわすシーンと、コーヒーショップで、裕也と話すシーンを見学した。

『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』という本の発売に続いて上演される、はるかさん自身の自伝的な映画だ。

 だから演っている演技は自分自身という特別な映画。映画会社やプロダクションが、彼女にかけている期待の大きさが窺える。


 撮影中も、合間を縫ってはマスコミが出演者のVや写真を撮っている。で、撮られてる方は、ほとんど意識もしていないが、自分が一番素敵に見えるスガタカタチになっている。むろん、我が妹さくらも。


 眩しいよ、さくら……。


「さつきさんでしょ?」


 撮影後、なんと、はるかさんから声がかかった……。

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