第60話《お姉ちゃん!?》
ここは世田谷豪徳寺・60(さくら編)
《お姉ちゃん!?》
テイク5で救世主が現れた……。
「あたしが、やってみましょうか?」
なんと、東亜美役の一ノ瀬薫さんが名乗り出た。
そして、一度、はるかさんの殴り方を見た後キッパリと言った。
「殴る方は問題ないと思います。ふだん人に手を上げたことがない人ならそんなものでいいと思います。変に腰が入っちゃうと、ちょっとケンカ慣れした人間に見えますから……問題は受け身の方ですね。一発張り倒してくれます。思い切りでいいです」
「ほ、ほんとにいいの?」
「ええ、慣れてますから」
なんせ、このシーンは、はるかがアメチャンを握ったまま張り倒すところなので、下手をすると怪我をする。で、どうしても、あたしもはるかさんもわざとらしくなってしまう。そこを本気でやれと涼しい顔で言うもんだから、なんだか、お気楽な流れで、やってみることになった。
パシン!
ドン ゴロゴロ
派手に吹っ飛んだ薫さんが、コンクリの中庭に叩きつけられ、ゴロゴロと転がった。
「大丈夫!?」
はるかさんが、駆け寄る。
「ウ……イテー……なんて言ったら、それらしく見えるでしょ?」
薫さんはニコニコと立ち上がった。
「キミ、すごいね、スタントマンやれるよ!」
殺陣師のおじさんのお墨付き。
「ケンカで、最初やられたフリするのに、よくこの手使ったんです」
清楚な顔でシラっと言う。
で、バックと顔の見えないアングルは、薫さんが演ることになった。
張り倒すシーンは、2テイクであっさりOKが出た。
「じゃ、由香の張り倒され顔撮りまーす!」
あたしはカメラに向かう。でカチンコの音で痛い顔をしてひっくり返る。当然地面にはマットが沢山敷いてあって痛くはありません。
このシーンと薫さんのスタントを繋ぎ合わせCGで、あたしの顔を変形させて仕上がりのようだ。
それにしても薫さんはなかなかの人だ。詳しく知りたい人は『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない』を読んでください。
で、明くる日は大阪駅でロケ。
ピノキオホールでの帰り道、吉川裕也役の勝呂さんと仲良くホームを歩くシーン。
簡単なシーンなんだけど、芽生え始めた裕也への抑制した愛情表現に苦労。なんとかOKが出て。今度は、はるかが、あたしたち二人を見て複雑な気分になるアップ。その後、コーヒーショップでのはるかと裕也の会話のシーン。ここは側で見学。演技の勉強。
すると、ロケ現場の向こうの雑踏、一番線のホームから上がってきた人物を見てタマゲタ!
フランスに居るはずのお姉ちゃんが、珍しそうにロケを見ているではないか……。
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