60
「おかえりなさい」と女の子。僕が入ってきたドアの反対側にはベランダに通じる窓がある。その窓を背にして、つまりこちらを向いて、その女の子は座っていた。「誰?」と僕。「忘れたの?」と女の子。「これ、面白いね。ずっと読んでた。リアルタイムで、起こったことも、何もかも書かれるんだね。ひとりでに動いて、ひたすら書いてる。私のことも書かれたから、てっきりあなたは覚えてるかと思ったけど」と続けた。「あ、今も書かれてる」と最後に付け加える。女の子が見ていたのは数十枚の原稿用紙。四百字詰めのものだ。その上を、シャープペンシルがずっと動いている。一定の動き。文字を書く動き。今のこの時間も、この状況も、この独白も、今までの過去話も、さっきまでの呆気なかった戦いも、全てこの中に書かれていっている。僕が今考えた言葉が、一字一句を違わずに、全て書き写されている。僕がそのようにセットしたからだ。なんとなく、書きたくなっ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます