見えない友人




お前ちょっとやばいよ

なんで? おれ全然やばくないよ

だってお前、さっきからこの部屋には一人しかいないんだぜ?

ん? それって一体どういうこと?

だからさあ、最初からおれ一人しかいないの、それなのにこんなふうに会話が成立しているってやばいだろ?

よくわからないな、もうちょっとわかりやすく説明してくれたらわかると思う

だからあ、自分一人だけで喋っているんだよ

うん

わかった?

まあ、だいたいは

それってやばいだろ?

なんで?

なんでって……だってそんな人間、普通いないだろ

そうかな?

そうだよ

でもおれ多重人格ってやつ聞いたことあるよ

多重人格?

うん、そういう小説を読んだことある、確か女子高生とかの読者が多かった筈だよ

それは知らなかったな、おれの認識不足

しかももてるんだよ

もてるのかよ?

ああ、もてるならいいか?

まあ、もてるんならいいね

よしっ話は決まりだな

……で、そのおれたちをもてさせてくれる女たちは一体、何処にいるんだよ?

さあな

さあなってことはないだろ、もてるんだから

確かにそうだな

街に出てみるか?

おお

それでさ、今こうやって話してるみたいに独りでぶつぶつと会話をしたりすればいいってことだろ?

そういうことだな

そうしたらもてもて?

ああもてもて


そうしておれたちは街へ出て渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で見えない友人と会話をしていたら警官に呼び止められ今、交番にいる



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