聖地であり戦場

豊富な作物と安定した環境が整う聖地、私は今そこで潜んでいる。

何故聖地で潜む必要があるのか?聖地は過酷な戦場でもあるからだ。

私たちを狙う化け物も徘徊し、時には同族すら食い殺しにかかってくる。




…そこで私は甘い香りのする穀物を見つけた。

変わった穀物ではあるが確実に美味しい穀物だろう、臭いでわかる。




しかし美味い話には…だ。




穀物を中心に死屍累々と化している。

どうやらあの穀物は罠で、それに釣られた奴から罠にかかっていく様に置かれていたらしい。

しかし同時に罠にかかった者達のお陰で死体が罠を防ぐ『橋』になって、その上を渡って行けばあの穀物には手が届くだろう。


ここはでありだ。

罠にかかる奴が悪い。

そして私にはこれから産まれてくるであろう子どもの為にも栄養が必要だ。

聖地へ来たのもそれが最大の理由なのだ。


死体を踏みにじりながら前へ進む。

栄養を蓄えてしっかりと子孫を残す。

その使命に答える為に手を伸ばす。











届いた!







が!




片手が罠に触れてしまった!




慌てて引き離そうとするも罠は既に作動済み。

半透明な物体が私の手を離さない。

片手をちぎってでも離そうとしたが、もがくあまりに足が罠にかかる。


そんな!ここまで来たのに!

私の子供が!生き残りたい!離れて!


己を支えていた使命感が暴走し、動き回るほど体の部位が次々に罠にかかって行き・・・




彼女はこの聖地…いや、で息絶えるのだった…。

無情にも。

残酷にも。











今日も

台所の片隅

片付けられない部屋の影

この聖地の主人が怠る箱庭の裏で

彼女の同族はカサカサと擦れた音を立てながら、黒光りした体で戦場を生き残ろうと徘徊するのだろう。

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