「雫ちゃん!おはよ~」


 病室に入ると吉川吾郎きっかわごろうが私に声を掛けた。先月、左腕の骨折で入院した男子高校生で十六歳だ。


「おはよう、雫ちゃん」


 同室の二人の患者さんも、私に声を掛けた。二人共、白髪混じりで六十歳を過ぎた男性だ。


「おはようございます!」


 私はみんなにいつものように笑顔で挨拶をする。


 中居保はベッドを仕切る白いカーテンを閉めたままだ。


 顔を見るのも嫌な奴。

 そう思ったけど、みんなの手前仕方がない。


 昨夜何もなかったように平静を装い、一気に窓のカーテンを開けた。せめてもの仕返しだ。


「うわっ、眩しいじゃん!」


 朝日が一気に差し込み、ベッドにいた彼が左手で目を隠した。


「中居さん、おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」


 私は彼の目を見ないように、わざと明るく挨拶をする。


「なぁ~、こっち見ないの?」


 仕方なく彼に視線を向けた。一瞬目が合ってしまった。


 朝陽を浴び、明るい場所で見る彼は、昨夜の彼とイメージが違って見え、不覚にもドキッとしてしまった。


 二重の大きな目、スッと伸びた鼻筋、ふっくらとした唇。その整った顔立ちに、一瞬見とれた。

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