私は茜の質問に、投げやりに答える。


「別に、たいした男じゃないわよ」


 日勤の看護師と交代し、ナースステーションから出ようとした時、若い女性に呼び止められた。


「あのぉ……中居保さんの病室はどこかしら?」


 見るからに二十代、年齢は私と同じくらいかな?


 咄嗟に昨日の電話の相手だとピンときた。


 派手なメイクに、長い爪には真っ赤なマニキュア、彼女からはプンとお酒の匂いがした。


 水商売なのかな?キャバ嬢っぽいよね。


 でも、若くて華やかで綺麗な女性だな。


 私は夜勤あけで疲れていて、一刻も早く帰宅したかったため、ナースステーションで点滴の用意をしている茜に声を掛けた。


「茜、中居さんの病室にご案内してくれる?お願い」


「ごめん、雫。今から402号室に行くの。悪いけど、帰る前に病室案内だけしてくれない。あとで入院の説明には私が行くからさ」


「えー……」


「頼むよ、点滴の交換なの」


 まじで言ってるの?

 あいつのとこなんて、行きたくないよ。


 昨夜のことを思い出し唇を噛み締める。彼の顔なんか二度と見たくなかった。


「ねぇ、まだなのぉ?」


 女性に催促され、仕方なく病室まで案内する。


「中居さんは432号室です。ご案内します」


 私は彼女を連れて、渋々病室まで歩いた。


 あーあ、ユーツだよ。

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