第13話野菜雲

12月。梨奈がキャバクラを辞めてからはじめてLINEを送ってみた。

梨奈はキャバクラ時代にキャバ嬢である事が"鋼の檻"なので、普通に飲みに行くことは出来ないと言っていた。後から思えば"鋼の檻"については、他の意味ともとれるフシもあったのだが、いずれにしてもアフターや同伴以外での飲みはいくら誘っても叶ったことがなかった。

それどころか、もうキャバクラを辞めたわけだから、お客さんの連絡先は消した可能性もある。もしかしたら返信はないと思いつつ意を決して飲みの誘いのLINEを送ると意外にもすぐに[久しぶりー。タイミング合えば飲み行きたいよね。]と返してくれるのであった。

ただ返信は返してくれるものの、「いつにする」みたいな具体的な話にはならないのであった。


1月になって[あけましておめでとう]のLINEからはじまって、梨奈がいまはダイニングバーで働いているという話になった。

[どんなお店なの?]

[「野菜雲」で検索すると出てくるよ。]

食べログで出てくる。

[お洒落そうなお店だね。]

[見てくれたんだ。ありがとう。食べに来て。]


ここまでLINEしてサトルは思う。梨奈がサトルのことをお客さんとしてしか見ていないのは分かるが、サトルだったら転職先を教えるのは少なくともある程度好意を持っている人に限られると思う。しかもキャバクラを辞めてからは、梨奈から連絡を取ることは一切なく、サトルの連絡に返信してくれているという状況が寂しくもあるが、"営業"をされている訳ではないのであった。


[いつくるいつくる]

に対し、[19日]

と返信しているのであった。

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