第14話浮き漂うボトル
サトルはいつも汚い飲み屋ばかり行っているので、お洒落なダイニングバーは入りづらかった。
「野菜雲」の前まで来たところで少し店内をのぞいてみると女性店員が同じ制服で何人かいるようなので梨奈を見渡して探すのも恥ずかしいし、単純に3ヶ月ぶりに会うので緊張もあった。
意を決して扉を開けると男性マスターと目があって「1人で良いですか」と言われつつカウンターに座る。その時「久しぶりー」の声に振り向けば、梨奈の笑顔がサトルに向けられていたのである。
小さなお店だったので思ったよりも梨奈が話しかけて来てくれる事に嬉しくなってしまった。
今は明らかにサトルは梨奈にとってのお客さんである感じが否めなかった。しかしそのうち普通に飲みに行く日も来るだろうと楽観的に考える。いまの状況が、キャバクラと違って金も大してかからないし、たまに1人で飲みにきて梨奈と少しでも話せるのなら全然わるくなかった。
飲みながら、またこのお店に来やすい口実を考えていて、ボトルを入れることにした。「ボトルキープしちゃったから、また来なくちゃ。」と言いたいためである。忙しげに動き回りながらもサトルに気をかけて笑顔で話しかけてくれる健気な姿に酒の酔いも増す思い。
当然ではあるが普通に飲んで店を出た。
ふとスマホを見るとLINEが入っていた。
[今日は来てくれてありがとう。凹んだ事があったから嬉しかった。]
サトルは酔った頭で返信を考えた。凹んだ内容について聞いてみたい思いにもかられたが、当然聞くことはなく、
[梨奈さん、凹んだ時はおれとカラオケに行こう]
と希望も込めて送ったが返事はなかった。
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