第12話ボトルキープはそのままに
秋風の中、もう、そのキャバクラに味を運ぶのが最後かと思うと感慨ひとしおであった。
「コルク」最終日10月30日は、梨奈が気に入ってくれた最初に弾いた曲を弾くこと、今までのエピソードを、小説風にまとめた冊子を渡すべく、準備して周到に臨む構えであった。
ところがなのである。ターミナル駅の喫茶店でコーヒーを飲んでいると急に視界が暗くなり、体がだるくなるのを覚えた。完全に発熱しているのがわかった。
サトルは初めて梨奈に電話した。
「もしもし。」
「うん、どうしたの。」
「あのさ、今日最後なのに、本当に申し訳ないんだけど、いま近くの喫茶店まで来ているんだけど、急に体調悪くなっちゃって、行けなくなっちゃったよ。」
「えっ、そうなの…。」
「うん。」
「体調わるいのなら仕方ないよ。」
「ごめんね、これからも頑張ってね。」
「ありがと。」
こうして、あっけなくもサトルのキャバクラ通いであり、梨奈のキャバクラ人生の最後を飾ることなく、おわったのであった。
翌日LINEで労いの言葉を送ると、梨奈の返信も[サトルの接し方はとてもあたたかった。]というものであった。
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