第11話お土産は甘いのか
9月23日、サトルはプールに行くつもりで家を出たが、スポーツセンターの前まで来たところで億劫になり、踵を返してターミナル駅まで行き、居酒屋に入る。酒が入ると気分が大きくなり、梨奈と話したいな、と思って来る。
そして「コルク」に向かったものの、今年は早めに涼しくなった秋風に吹かれながら歩いていると、ふと、キャバクラにいくのが、場違いのような、虚しいような気分になり、お店の近くのコンビニのところで迷っていると、ちょうど出勤でサトルのことをいま見かけたらしい梨奈から[コンビニのところにぽい人がいた。]とLINEが来た。
気がついたのなら、声をかけてくれても良いじゃないかと思いつつ、その重たそうな「コルク」の扉をくぐってしまうのであった。
この日は梨奈が10月いっぱいで辞める話をした。それは驚くことではなかった。4月にあった頃から10月に辞めると言っていたので、梨奈にとっては予定通りかもしれなかった。
「11月からダイビングの仕事するの?」
「ううん、ダイビングは試験に受かってからなの。とりあえず計画していた貯金が10月いっぱいで貯まると思うから辞めるの。」
「そうか。」
「なんか、辞めるまでは消化試合って感じだよ。」
「まあ、そう思わないで、大変だろうけど、せっかくなんだから、最後まで楽しんでみたら。」
サトルはスマホのカレンダーをみて、
「10月いっぱいだったら、来れるとしたら30日かなぁ。」
サトルはそう言いながら1ヶ月以上先だな、と思った。
「お客さんなんてコンスタントに来ないと意味ないだろうけどね。」
すると、梨奈の返事は、
「あ、でもねー、それは人による!」
というものだった。
その「人」というのは、サトルのことだと解釈して良いのだろうか。
そして梨奈は、最近実家に帰ったといって、その時のお土産の安倍川餅味のラングドシャをくれた。
サトルは少し驚く。梨奈にお客さんが何人いるかは知る由もないけれど、お客さん全員におみやげなんて渡す筈もない。
もしかしたらサトルは梨奈にとって特別なお客さんなのだろうかと考えていた。
そんな訳ないだろうけど、という気持ちも抱えつつ。
そのあと10月6日に会社帰りにふらっと「コルク」に行ってしまった。これが12回目の頻会であり、そのあと、最後にもう一度行くつもりでいたのであった。
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