第31話 魔女の正体は?
「これは噂通りの豊満な美少女だ。いじりがいがある」
派手なマントの男はいちごの方へと歩みより、イチゴの頬をベロリと舐めた……そしてまた舐めた。城主っぽいこの男は変態なのか。
「美味しそうね」
女の声がした。マント男の後ろ化路から出てきたその女性は、比較的華奢な体つきをしており、胸元が大きく開いた黒いドレスをまとっていた。
しかし、胸元が寂しいその体形と銀色の髪は……シャリアさんにそっくりだ。顔つきもそっくりで、これは双子の姉妹ではないかって位に似ていると思った。
「あなたはフィオーレ? フィオーレ・メセラなの?」
「シャリアさまの妹? まさか、昨年亡くなられたのでは……」
咄嗟にシャリアさんとエリザが呟くのだが、その声をかき消すように銃声が響いた。
パン!
あの、シャリアさんにそっくりな女が自動拳銃を撃った。跳弾がキンキンと火花を散らして弾けた。
危ねえ。石づくりの地下室で銃を撃つなよ……。
「黙っとけ。私はフィオーレではないし、そもそもその女の事など知らない。最近、悪魔の女として勇名を馳せているシャリアと姿が似ている事で迷惑を被っているのは私なのだ」
被害者面して拳銃をぶっ放す怪しい女だ。
「私も迷惑している。あのような魔性の女と婚約していたのだからな」
マント男……こいつがシャリアさんの婚約者ラウル・ルクレルクだ。派手な装飾のキラキラマントは趣味が悪いと思ったのだが、金髪を総髪して髭も綺麗に剃っているイケメンさんだった。多分金持ちで、イケメンで、地位もあるいい男だろうに、何でこんな事になってるんだ? イチゴが渦中にあるのは分かる。100年前の勇者戦争に関わる秘密に関わっているからだ。しかし、何故シャリアさんが婚約解消されなければならない。そして、シャリアさんのあの悪い噂は何だ。誰かが意図してシャリアさんを陥れようとしているとしか考えられない。
その誰かって、そこにいるシャリアさんそっくりの女じゃねか。一目瞭然。あたりマエダのクラッカーってやつだろ。
「あの……ルクレルク卿。不審者の尋問は私の管轄なのですが?」
「そうだったな。しかし、この一行の尋問は私が直接行う。この、カリア・スナフと共にな」
シャリアさんのそっくりな女がニヤリと笑った。カリア・スナフって名前なんだろう。そいつは舌を出して自分の唇をベロリと舐めたのだが、その舌が何故かやたら長いような気がした。
「お前たちは外で待機していろ。何かあったら呼ぶ」
「了解しました」
バジル・ルブランとその部下数名が右手をバシッと挙げて敬礼した。その姿はナチスっぽいのだが、右手の角度が少し違う気もする。ミリオタの葉月ならその辺の違いを指摘するのだろうが、俺にはよくわからない。
渋々と拷問部屋から出て行くルブラン以下四名の兵士。その背中を見詰めながら女の方が奇声を上げなら笑った。シャリアさんにそっくりなカリア・スナフだ。
「さあ、これからは私たちの時間だ。なあラウル。男一人と女二人だ。男は私に貰えるか? 若くて生きが良い。はあああああ……見てるだけで興奮しちゃうよ」
「待て待て、尋問が終わってからだ。私もそこの虎娘を味わってみたいしな」
「あら。あんな獣に興味があるの? 嫉妬しちゃうわ」
「少し味見するだけさ。肝心の精は君の為に」
「そうでなくっちゃ。ねえ」
ラウルとカリアが抱き合って、キスを始めた。ぺちゃぺちゃと舌を絡め合う水音が周囲に響く。俺はその様を見つめていて、どうしようもなく興奮してしまった。こんな場所で性的に興奮してしまうとかどうかしてる。しかし、俺の下半身はしっかり反応しているし、ズボンは内側から押されてテントを張っている。これは恥ずかしい。誰かに見られたら大変だ。シャリアさんは背中を見せているから気付いていない。ではエリザはどうか。ちらりと左側を見る。そこで俺と同じように拘束されているエリザ……彼女の視線は……やや下向きで俺の下半身をしっかり見ていた。
「さて、仕事を始めようか。先ずは自己紹介をしておこう。私はグラスダースの北方、ノードリアの大領主エドラ・ルクレルクの子、ラウルだ。現在は王都防衛の要であるリドワーン城の主であり、北方三将軍の中の一人。北方三軍の筆頭であるリドワーン軍三万は私の配下だ。現在、この城に駐屯しているのは二千ほどだがな」
……なんだか立派な将軍だよ。流石はシャリアさんの婚約者ってところだ。しかし、そんな人物が何故あの得体の知れない女、カリアとエロい関係になってる……。
俺はちょっと考えた。
あの、カリア・スナフって女は魔法使いだ。シャリアさんやエリザとは別のタイプ。魔法使いにも白と黒があるというのは、ゲームなんかでは定番の設定だ。そんな設定がこの世界に通用するのかどうかは知らないが、概ね合ってる気はする。つまり、あの女は黒魔法使い。シャリアさんやエリザは白魔法使いって事だ。
あの黒魔法使いは元々シャリアさんにそっくりな容姿だったのか、それとも変化の魔法で化けているのかは知らない。でも、俺はシャリアさんがイチゴそっくりに変化したのを目の当たりにしたのだ。あの黒魔法使いがシャリアさんそっくりに変化していても不思議じゃない。
そしてその、シャリアさんにそっくりな黒魔法使いのカリアが、このリドワーン城周辺で悪さをした。性的に男をたぶらかして虜にしたんだ。しかも、シャリア・メセラの名を使って。そしてこのリドワーン城の主、ラウル・ルクレルクも虜にした。普通に考えるなら、シャリアさんそっくりな容姿に疑問を抱くはずなんだ。しかし、この濃厚なエロい空機を振りまくカリアの前ではそんな理性は吹っ飛んでしまうのだろう。現に、俺の下半身は痛い位に張りつめているし、エリザもそれが気になって仕方がないようで、ちらちらと視線を送ってきているのだ。
「さて、イチゴ・ガーランド君。君の本名はイチゴ・グラスダース。間違いないね」
シャリアさんの前に立つラウル・ルクレルクが問う。しかし、シャリアさんは答えない。そりゃそうだ。彼女はイチゴじゃないんだから。
シャリアさんはこのままイチゴに成りすますのか。それとも、自らの正体を明かしてラウル・ルクレルクと対峙するのか。
超エロい淫乱な空気の中で、シャリアさんとラウルの間に激しい火花飛び散っているように見えた。
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