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交際が始まってからの中林は例の冷たい表情を見せなかった。それどころか波那に向けてくる愛情は会う回数を重ねる度に増していき、波那もそんな彼に日々心惹かれて畠中のことなどすっかり頭から払い除けられていた。
ところが彼の自宅に泊まる際、何故か波那が眠りにつくと必ず別室に移動していく。なるべく一緒にいたいのに……と少し寂しく思うのだが、まだ日も浅いので慣れるまで待とうと静観する。それでも交際そのものは至って順調でほぼ週末毎にデートを重ねて夜の方もすっかり馴染み、着実に愛を育んでいた。
ある週末の真夜中、二人は当然の様にベッドを共にし、裸になって体を重ね合わせていた。波那ちゃん……中林は仰向けになっている波那の体の上で腰を動かし、体中そこかしこにキスマークを付けていく。波那は恋人の体に腕を巻き付け、瞳を閉じて気持ち良さげに喘ぎ声を上げている。
数時間ほどセックスに時間を使った後、この日は決算期で仕事が立て込んでいた中林の方が先に眠りこけてしまっていた。このまま朝まで一緒にいられると良いな……波那はそんなことを考えながら恋人の体に身を寄せて心地好い眠りにつく。
『突然のことで驚かれると思いますが、“
浅黒い肌の大柄な女性からその言葉を聞かされた中林は、ショックのあまり思考回路が止まってしまう。しかし見た目はひょろりと細長い子供の姿で、現在親しくしている津田や恋人である波那の姿はどこにも無い。
先程名前が出た“野田ミソラ”とは中林の幼馴染みである二つ年上の女の子で、子供の頃に入所していた施設で二人手を取り合い仲良く暮らしていた。ところがこのところ急に嘔吐したり貧血を起こしたり、それが治まったかと思えば今度は下腹部が膨らみだしてきて動きが鈍くなっていった。
一体何があったのだろう? サヨナラの一言くらいは言ってくれそうなものなのに……中林少年には思い当たることがあったのだが、その頃はそうなった理由がまだよく分からず言葉に出す事が出来なかった。
ただ職員たちは何か隠してる、多分ミソラに何かしたのかも知れない……彼らは子供たちに彼女の変化を勘付かれないよう、皆から引き離して隠滅を図ったとしか思えなかった。
ミソラがいなくなって以来独りで行動することが多くなった中林少年は、普段子供たちはあまり出入りしない『納屋』と呼ばれていた場所で、これまで嗅いだ事の無い異臭に足が止まる。
臭っ! それは鼻をつんさぐ程の臭いで即座に立ち去ろうとも思ったのだが、その時の彼は何故か誘われる様に建物に近付いた。『納屋』の小窓には黒いカーテンが掛けられ、戸には鍵が架かっていたのだが、当時から怪力だった彼は好奇心のままあっさり破壊して中へ入っていく。
悪臭は更に強くなり、袖口で口を押さえながら奥へ進んでいく。手探りで小窓を探し当ててカーテンを開けると、小汚いベッドの上に何かが横たわっていた。
何だ? 臭いにも多少慣れてきて躊躇無く近付いてみると、悪臭は更に強くなってここが出所であることに気付く。
真っ黒のカーテンを全開にしても薄暗い部屋の中目を凝らしてよく見てみると、下半身を赤く染め死後何日かが経って腐敗の進んだ親友とへその緒で繋がれたまま血みどろで産まれ落ちた赤ん坊の死骸だった。
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