ー11ー
「疲れた顔してんな」
風呂から上がった畠中はエキストラベッドで眠っている波那を見つめており、初対面の日に一瞬だけ目が合った時のことを思い出していた。
こんな可愛い子いるんだ……好きなタイプの顔立ちでほぼ一目惚れ状態だった。思わず見惚れていたのを勘付かれたようだったのだが、特に気にしていないのか実は偶然だったのか、微笑みを見せて会釈してくれたのに、罰の悪さから羞恥心が出てとっさに視線を逸らしてしまった。
そのせいもあってなかなか声が掛けられず、その機会を得られても嫌味しか言えずにすっかり嫌われているのだが、それを打破したくて酒の力を借りる形で大勢の前で交際なんか申し込んでしまった。その場で既に振られているのだが、執念深く全く諦めておらず今は手の届く所にいる。
畠中は波那の髪の毛をそっと触る。ほんの少しクセのある柔らかい髪質で、ずっと触っていたい衝動にかられてしまう。
起こさないでおこう。眠っている隙に髪を触っている時点で理性など保たれていないのだが、どうにか衝動を抑えて手を離す。
波那は何かを感じたのかうっすらと瞳を開けて時計を見ようと首を動かしたのだが、寝ぼけまなこながらも異変に気付き、慌てて飛び起きてその場から離れる。
「なっ何してるんですか?」
畠中に寝顔を凝視された波那はすっかり動揺して声が上ずっている。
「あんたの寝顔見てた」
「どうして……?」
畠中はそれには答えず波那の腕を掴み、自身の方に引き寄せて背中に手を回してくる。波那は恋愛感情で男性に抱き締められたことなど一度も無かったので、とにかくこの状況から逃れたくて抵抗はするものの、畠中の長い腕が彼の体にしっかりと巻き付いてびくともしない。
「離してください、こんなことしたくありません」
しかし畠中はその言葉を聞き入れず、そのままベッドに押し倒すと波那の首筋に唇を這わせ、長い指を下着の中に滑り込ませてきた。波那は持てる力を振り絞って上に乗っている畠中の体を押し退けようとしたが、呼吸の乱れと疲労のせいで体力は奪われ、体は不可抗力のまま操られていく。
呼吸の浅くなった波那の体には酸素がまともに入らず、次第に息が苦しくなってくる。畠中は一気に動きの弱くなった波那の異変に腕の力を緩め、下着の中に入れていた手も抜き取ってぐったりしている体を支えてやる。
「波那……」
その声はとても優しく波那の耳に届いていた。呼吸を乱していて返事はできなかったが、畠中に対する恐怖心と嫌悪感は一瞬にして消し去られる。波那は彼の逞しい体に身を預けてゆっくりと呼吸を整えており、その間は分からないなりに体をさすったり、胸を押さえている手を握ったりして落ち着くのをただじっと待っていた。
本当はあの黒目が気になった時点で何かを感じていたのかも……口が悪くて意地悪なことしか言わないのに、時折垣間見せるようになった優しい一面にときめきを覚える事も密かにあったのだ。
「畠中さん、あの時はごめんなさい……『嫌い』なんて言葉、使う必要無かったんです」
波那はくすぶり続けていた気持ちをようやく伝えることができてホッとした表情を見せる。そんな彼を可愛く思う畠中は、そっと体を抱き寄せて優しい口づけをし、汗で少し湿った髪の毛を触る。空いている手は再び下着の中に入れて股間を弄り始め、波那は戸惑いながらも少しずつ受け入れていく。畠中は着ている服を全て脱ぎ捨てて小さな体の上に乗り、二人はついに結ばれる。のだが女性としか経験の無い『処女』である波那の体は本能的に交わりを受け付けず、『異物』の『挿入』に痛がり始めた。
波那は交わりを解こうと畠中の体を押し退けようとするが、それがかえって自身の穴を狭める結果となってますます状況は悪化する。
波那は痛みに堪えきれず涙を滲ませながら懇願する。畠中はそんな彼の体を愛撫して気を紛らわす様仕向け、穴が少し緩んだ隙にすっと交わりを解いた。波那の力は一気に抜けて初めて経験する痛みに泣き出してしまい、ごめんなさい……と言いながら畠中の胸に顔をうずめた。
「謝るのは俺の方だ」
今日は止めた方が良いのかも、と思いながらも三度股間に手を入れると、一旦交わったことで畠中に馴染み始めた波那は、畠中に体にしがみついて少し恥ずかしそうに喘ぎ声を上げる。その体を一度引き剥がして見た波那の顔はほんのりと紅くなって欲情しており、瞳はとろんとして艶やかに潤んでいる。その表情にすっかりほだされた畠中は二つの体を一つに重ね合わせる。波那は瞳を閉じて畠中とのセックスを受け入れ、腰を動かして奥へ押し込んでも痛がらなくなっていた。
畠中さん……波那は本能を目覚めさせ、体を求めて甘えてくる。畠中はそんな彼がたまらなく愛しくて睡眠を惜しんで情事を重ねていく。波那は何度かの交わりを終えると疲れ切って眠ってしまったのだが、自身の腕枕で眠るその寝顔は天使にしか見えなかった。
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