第39話 トモダチだ

「シンヤ!?」


 僕は少年の顔を確認し、名前を呼ぶ。間違いない。後藤に吹っ飛ばされて、気を失っていたシンヤだ。彼の無事な姿……とは言えないが、立ちあがって声を発する姿を見て僕は安堵のため息をつく。シンヤはシステムがなんとかと言っていたが一体何のことだ?


「てめえ、まだ動けたのか……」


 後藤が目を見開いたまま笑い、嬉しそうに喋っている。僕と話していた時もそうだが、こいつは何がそんなに嬉しいんだ。そして、その怖くて不気味な笑顔はやめてもらえないだろうか。寿命が縮みそうだ。


「いぎっ!?」


 後藤が突然、声を出し、シンヤに握られていた拳を振り払って、距離を取った。


「てめえ、今の馬鹿力はなんだ?」


 そう言いながら後藤はシンヤに握られていた左拳を右手でさする。どうやら、シンヤは後藤の拳を握り潰そうとしていたようだ。でも、シンヤの手は後藤の手と比べれば一回りもふた回りも小さい。とても、後藤が怯むほどの力が出せるようには思えない。しかし、後藤は間違いなく痛がっている様子だ。


「なあ、シュウ……」

「な、なに?」


 シンヤの呼びかけに僕は反応する。


「オレはよ。ダチはたくさん作るんだ。つるむ奴はたくさんいた方が楽しいからな。でもよ、こんな風にいじめやカツアゲなんかの面白くねえことにオレが首を突っ込むとき、一緒に動いてくれる奴はなかなかいねえんだ」


 シンヤは後藤と目を合わせたまま、話を続ける。


「オレがそういうことに首を突っ込んだ途端にその場から逃げ出す奴がほとんどだった。一旦は一緒にケンカしてくれる奴もいたけど、オレが不利になった途端に逃げ出したり、不良相手に見逃してもらおうと許しを請うためにオレを見捨てたりする奴もいた。別にそいつらを責めてるわけじゃねえ。仕方ねえことだとも思ってる」


 シンヤは少しさみしそうに喋っていた……。


「だからよ……。嬉しかったぜ。さっきのお前の姿を見て。どんだけボロボロになってもオレを守ろうとしてくれる姿を見てよ」


そういうと、シンヤは僕の方に視線を向けて笑顔を作っていた。そして、再び後藤の方に視線を向き直した。


「お前はただの『ダチ』じゃねえ……『トモダチ』だ!!」

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