第38話 守る理由

 そうだ。僕がシンヤを守る理由。それは『友達』だから。それだけで十分なはずだ。……シンヤと出会ってまだ1カ月余りだ。親友と呼べる仲では決してないだろう。いや、コミュニケーション能力のあるシンヤにとっては、僕なんて何百人といる「知り合いに毛が生えた程度の人間」の内の一人でしかないかもしれない。


 シンヤと初めて会ったあの日……。正直、僕は不良ファッションのシンヤを見て関わりたくないなあと思っていた。きっと僕の顔は引きつっていただろう。だけど、シンヤはそんな僕を見ても、「ダチ」だと言ってくれた。ファミレスにも誘ってくれた。僕が勉強を教えてほしいと泣きつけば時間を取って教えてくれた。全然分からなかったけど……。


 シンヤが声をかけてくれなかったら……、人づきあいの苦手な僕は同年代の少ない学園で孤独になっていたかもしれない。シンヤが僕のことをどう思ってるかなんてわからない。だけど、少なくとも、僕にとってシンヤは数少ない「友達」の一人なんだ。見捨てるなんてできるわけがない!


「『ダチだから』だって? 見かけによらず、熱い奴だな。てめえ」


 後藤が笑いながら、握り拳の指をぼきっ、ぼきっと鳴らす。何が面白くて笑ってんだ。こっちは、痛みと恐怖でまともに動かない体を小さじ一杯の勇気でむりやり動かしてるってのに……。


「もう一回だけ聞いてやるぜ。痛い目に合いたくなかったらさっさと消えな」

 

 くどい奴だな。僕はもう腹を括ったんだ。答えは一つに決まってる。


「嫌、だ!」

「へへっ! 今日は最高の日だぜ。二人も気に入る奴が現れるとはよ。てめえら感謝しろよ。普段は半殺しで済ませるところだが、てめえら二人の男気に敬意を称して全殺しにしてやるよ!」


 敬意を称するから半殺しから全殺しに変えるっておかしいだろ……。そこは見逃してくれるところじゃないのか? せめて4分の1殺しくらいにサービスしてほしいところだ。

 後藤が大きく拳を振り上げ、僕を殴る体勢を取る……。

 はあ、死を克服する研究がしたくて今日まで生きてきたのに……。僕の人生にこんな危機が来るとは夢にも思わなかった。後藤の言う「全殺し」とやらが終わった時に僕は生きているんだろうか?

 後藤の拳が勢いよく振り下ろされる。僕は衝撃に備え、体を強張らせて目を強く閉じた。


「?」


 いつまで経っても拳の衝撃が僕に伝わってこない。僕はおそるおそる目を開いた……。そこには頭から血を流した少年が後藤の拳を手のひらで受け止めていた。


「すまねえな。シュウ! だけど、お前が時間を稼いでくれたおかげだ。システムの起動が完了したぜ!」

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