第40話 カツアゲ事件決着

 シンヤが言い終わるや否や後藤が口を開く。もう、左拳を痛がっている素ぶりはない。


「友情ごっこはそこまでにして、続きをやろうぜ……」


 ああ、とシンヤが応答する。


「ところでオッサン、申し訳ないが、今からオレはちょっとばかし卑怯な戦いをするつもりだ。ホントは正々堂々が好みなんだけどな。これ以上、仲間をあんたにボコられるわけにはいかないからな」

「卑怯? 道具でも使うのか? 金属バットか、ナイフか、それともチャカか? おもしれえ。やってみな」

 シンヤはにやっと笑う。

「さすがにそこまで卑怯じゃねえよ……。ただ、そんなちゃちなモンよりよっぽどハイテクだけどな……」

「来いよ、クソガキ! なに使うか知らねえが、そのエモノごとぶっ飛ばしてやるからよ!」

 後藤も不敵に笑う。

「シュウ、良く見とけよ。今から面白いもんみせてやるからよ!」

 シンヤはそう僕に言うと何やら呟きだした。

「システム実行。3倍だ」


 シンヤの背中、首の根元辺りから「ピーッ」という音がかすかに聞こえた。何の音だ? と考えていると、一瞬でシンヤの姿が消えた。いや、そうじゃない。消えたと思ってしまうほどの超スピードでシンヤは既に後藤の懐に飛び込んでいた。


「なにい!?」


 後藤も状況が理解できないのだろう。大声をだして驚愕している。


「おっさん、さっきパワー不足だってオレに言ったよな、これならどうだああああああ!!」


 後藤は防御を試みようとするが間に合わない。シンヤの拳が後藤の腹部に炸裂する。後藤の体がまるでピンポン玉のように吹っ飛んでいく。距離にして3~4メートルほどだろうか。巨体が宙を舞い、地面に墜落した。


「いてててて……さすがに3倍はやり過ぎたな……。指の骨が折れそうだぜ……」


 シンヤは独り言を呟く。僕は驚きのあまり、目を見開いていた。それはあまりにも常識外れなパワーだった。百九十センチは越える大男の体を、僕と同じくらいの身長の……百六十センチ後半くらいの小柄な少年がすっ飛ばしたのだから。僕は後藤の様子を確認した。白目を剥いて泡を吹いている。大丈夫か、死んでないだろうな……。


「ひいいっ!? そんな馬鹿な!? 後藤さんがやられるなんて!?」

「なんなんだ、あのガキ!? 化物じゃねえか!」


 後藤の取り巻きの不良3人が驚きの声を上げると同時にシンヤに対して恐怖の感情を表す。


「おい!」

 シンヤが不良たちに声をかける。

「ひっ! な、なんですか?」

 不良たちが怯えたようにシンヤに尋ねる。

「そのおっさんを早く病院に連れてってくれ。死なれたら困るからな」

 不良たちは3人がかりで、どうにか後藤の巨体を担ぐと小走りで逃げるように去って行った。


「お、終わったのか。た、助かった」


 僕は安堵のあまり、その場にへたり込んだ。

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