第36話 シンヤ対ゴッド

「そんじゃ、早速はじめっか! 一発でやられるのはなしだぜ?」


 そう言うと、後藤はその巨体に似合った大きな握り拳を作り、シンヤに殴りかかる。


「ぐっ!?」


シンヤはとっさに両腕でガードした。だが、ダメージが大きいのか、呻き声を上げる。


「良いねえ。チビの癖に俺の一発に良く耐えたな」

「クソッ!」


 シンヤは後藤に拳と蹴りを叩きこむ。が……。


「良いパンチに良い蹴りだな。少しばかし痛えと思っちまったぜ……。だが、残念だったな。パワー不足だ。チビに生まれたことを恨むんだな」


 後藤はそう言い終わると、シンヤの側頭部に向かって蹴りを繰り出す。


「がっ!?」


 丸太のように太い脚から繰り出された蹴りをシンヤは右腕でガードした。しかし、次の瞬間には後藤は顔面に向かって拳を叩きつけようとする。


「ぎっ!?」


 シンヤは左腕でガードする。だが、ここでもダメージが大きく、呻き声を上げてしまう。後藤はさらに猛攻を加えてくる。シンヤは避けるのが精一杯のようだ。


「お、避け一辺倒になってんな。分かるぜ。もう両腕とも痺れてまともに動かせねえんだろ?」


 シンヤは答えなかったが、明らかに両腕にダメージがあることはケンカ素人の僕にも分かった。腕をだらんと垂らしたまま動かさない様子で避けていたからだ。


「こいつは流石にマズいかもな……」


 シンヤの独り言が聞こえた。かなり追いつめられているのが伝わる。その後もシンヤは避け続けたが、ついにその時が来てしまった。


「なっ!?」

「残念、フェイントだ。ひっかかったな」


 言葉の意味は分からなかったが、後藤の拳をかわし続けていたシンヤが、突然バランスを崩す。奴はその隙を見逃さなかった。後藤の左拳がシンヤの胸に突き刺さる。


「があああああああああああああああああああ!?」


 シンヤが今までで一番大きな呻き声を上げて3、4メートル吹き飛ばされる。まるで交通事故だ。


「もう終わりか? クソガキ」


 シンヤは答えない。気を失ってしまったのか? シンヤの頭部から血が流れているように見えた。外野では、不良三人が「さすが、後藤さん!」と歓声を上げている。


「返事なしか。仕方ねえ。じゃ、止めを刺させてもらうとするかな」


 後藤が倒れているシンヤに歩みよろうとしている。何がゴッドだ。完全にデビルだ、あいつは。クソっ!


「なんだお前?」


 後藤がキョトンとした顔で突っ立ている。


「なんだろうな? 僕も分からないや」


 僕は訳のわからない答えを後藤に伝えた。いつの間にか、僕は無意識のうちに後藤とシンヤの間に立って構えていた。

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