53.出来る出来ない


 息子は、他の子よりも色々と遅れている。

 話すのも、歩くのも、全部が全部出来るのが遅かった。


 俺は昔からなんでも人より出来たから、そんな息子の姿がとても苛立たしかった。

 なんで、こんな簡単なことも出来ない?

 真面目にやってないんじゃないか?


 小学生になって、読み書きや簡単な計算さえも満足に出来ない息子に、とうとう俺の怒りは爆発してしまった。


「何でこんな事が出来ないんだ! やろうとしていないだけだろ!」


 何度も何度も同じ事を聞いてくるから、それに対して怒鳴った。

 突然の大声に息子の顔が固まって、そして歪んだが、もう止まれない。


「お前は他の子よりノロマなんだから、人の倍以上努力しろ!」


 それが傷つける言葉だと分かっているのに、あえて口にした俺は親失格なのだろう。

 しかし頭に血が上っていたのと、その時は息子の為だと信じて言ってしまった。


 言われた息子の顔が、一瞬無表情になる。

 すぐに泣き顔に変わったので、気のせいだと思ったが。





 それが間違いだった。

 気づいた時には、既に手遅れのところまで来ていた。


「どう、お父さん? 上手く出来てるでしょ」


 俺の目の前で手際良く動いている姿に、感動するわけもなく、ただただ恐怖しかなかった。

 妻を、長年連れ添った妻を、黙々と解体されているのだ。

 それ以外の感情に、なるわけがない。


 どうして、こんな事になってしまったんだ。


 楽しそうに笑みを浮かべている息子を、見つめることしか出来ない俺。

 ただ、他の子と同じようになって欲しかっただけなのに。



 どこで、間違えてしまったんだろう。




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