48.連鎖


 憎くて憎くて、殺したい人がいる。

 だから殺すことにした。


 しかし俺には守らなきゃいけない家族がいて、警察に捕まるのは避けたい。

 どうにかして事故に見せかけるか、事件にならないように上手く死体を隠すか、俺は必死に考えた。

 そうしてついに、その方法を見つけた時俺はやつを殺す覚悟を決めた。





 時期も場所も最高のタイミング。

 俺はなんともあっさりと、目的を遂げた。

 誰にもバレないように、山奥に死体を埋めて、証拠も隠滅した。


 後は、そいつがいなくなったとすぐに気づかれないためにも、細工をするだけ。

 だから俺は、免許証から分かった住所におもむいていた。


 どうやら一人暮らしだったみたいで、1Kのマンションはとても整理整頓されている。

 人との関わりも最低限らしく、これならすぐにバレなさそうだと自分の幸運に感謝した。



 あらかたの作業を終えて、さあ帰ろうとした時、俺はふとそれに目がひかれる。

 それは一冊のノートだった。

 別に何が変だとか、珍しいわけじゃないのだけれど、無性に気になる。


 誰かが帰ってくるわけじゃないから、少しぐらい中身を見ても構わないだろう。

 俺は床に座って、ノートを開いた。


 一ページ目を開くと、どうやら日記みたいだった。

 特にこれと言って面白い話が書かれているわけじゃないから、ふと思いたって最後の日付のページを開いた。

 そして驚く。


 ページの一番上には、まずこう書かれていた。


『俺を殺した人へ』


 まさかそんなことが書かれているとは思わず、開いた口が塞がらなくなる。

 それでも続きが気になり、目で追った。


『俺を殺した人へ


 これを読んでいるという事は、無事に俺を殺したんですね。

 男性なのか、女性なのかは分かりませんが、お疲れ様でした。


 さて。どうしてこんな風に、あなたにあてて文章を書いているかというと、私を殺したあなたに知ってもらいたい事があるからです。

 一つ考えて欲しいのですが、あなたはどうして私を憎んだんでしょうか?

 答えは、出ないでしょう。きっとその事に、今あなたは驚いているはずです。

 そうです。あなたは全く知らない人なはずの私を、憎み殺したのです。しかし、それもしょうがない事なので、恨んでいません。


 私もあなたと同じでした。

 憎んで憎んで憎んだ人を殺したあと、今のあなたと同じように、その人の家に行き同じような手紙を見つけました。

 手紙を読んだ私も、その人の事をなぜ憎んでいたのか理由がないのに気付き、愕然としました。

 その人の手紙には、その人も同じように人を殺したとも書かれていました。

 そして最後は、この殺人の連鎖は続く。人を殺した私達は、いつか同じように殺される。と締めくくられていました。


 手紙を読んだ私は、いつ殺されてもいいように準備を始め、そしてあなたに殺されました。


 この連鎖は続きます。あなたも、今の生活を捨てるしかないのです。』


 全てを読み終えた俺は、体の震えが止まらなかった。

 ここに書かれているとおり、よくよく考えてみると、どうして殺したいくらい憎んでいたのか分からない。


 もし書かれていることが、全部本当なのだとしたら。


 俺はいつか殺されるのだろう。

 全く知らない奴に、特に理由もなく。



 そうして連鎖は、続くのだ。




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