49.脱出ゲーム


 僕はいわゆる、リアル脱出ゲームが好きだ。

 一人で色々な場所に行っては、全てを成功させている。


 他の参加者と協力しなきゃいけないやつは、仕方なく一緒にやるが、絶対に僕が全部やった方が早いと思ってしまう。

 それぐらい、他の参加者は騒ぐだけの馬鹿ばかりだった。



 それに最近は、色々なリアル脱出ゲームがあり全部に参加しているせいで、パターンが読めてしまって、僕にとって難しいものがなくなってしまった。

 どこか僕を満足させられるような、そんなのを企画してくれる人はいないものか。

 しかし見つからず、最近は調べながら、ため息をつくばかりである。



 そんな、ある日の事だった。


『様々な試練を乗り越えて、人類を滅亡させよ』


 僕が登録しているサイトの内の一つから、一通のメールが届いた。

 差出人は前に参加したことのある所で、まあまあ良かった思い出がある。

 開催される日時は、都合がいい事に仕事が休みの日だ。


 これはもう、行くしかない。

 僕はそう決めると、さっそく情報を集める。


 しかしいくら探しても、少しも得られなかった。

 これは、ますます期待が高まる。

 開催されるまで、あと数日だけど。待ちきれなくなってきた。





 そして、ついにその時が来た。

 僕はあらかじめ指定されていた場所で、一人待っていた。

 大きなビルの、とある一室の扉の前。

 周りには誰もいなくて、少しの不安はあったが、それよりも期待する気持ちの方が上回っていた。


 早く来ないか。

 案内する人の姿を探して、辺りを見回すが人っ子一人いない。

 もしかしたら本当に、間違っているのか。

 約束の時間が刻一刻と迫っているせいで、焦りが止まらない。

 場所と時間を何度も確認するけど、不安な気持ちは大きくなっていく。



 しかし非情な事に、とうとう時間が来てしまった。

 まさかのデマだったのか、ここのサイトはもう二度と使わない。

 期待をしていた分、落胆が大きい。

 僕は苛立ちすらも出てきて、それをぶちまける為に、目の前の扉を勢いよく蹴ってしまった。


 あまりにも力を入れすぎたせいで、鍵が壊れてしまったのか、扉がゆっくりと開く。


 その様子をしまったと思いながら、僕は顔を青ざめさせる。

 これは弁償しなくては、か。

 どのぐらいの金額がかかるのかと、頭の中で計算していた僕の頬を、強い風が撫でた。

 あまりにも強かったから、反射的に目を閉じる。


 ここはビルのはずなのに、なんでこんな強風が?

 その答えは、風が止み目を開けた時に分かった。


「……うそ、だろ」


 しかし、あまりにも非現実的すぎて信じられない。

 目の前に広がるのは、焼け野原。

 一面が赤く、そしてその中を転がっているのは……


「ぉえっ」


 分かってしまった途端、僕は胃の奥から込み上げてきたものを、地面に吐き出す。

 いったい、どういう事なんだ。

 意味がわからなくて戸惑う僕を、まるで嘲笑うかのように一枚の紙が上から落ちてきて、顔に当たった。


 それを手に取った僕は、書かれている文字を読む。



『様々な試練を乗り越えて、人類を滅亡させよ』


 たったそれだけ。

 しかし僕にとっては、それだけで充分だった。


 ああ、僕のせいだ。こんな事になってしまったのも、全部全部。




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