46.アンケート


 そのハガキは、ほかの郵便物にまぎれてポストに入っていた。

 印刷された文字で、シンプルに書かれている。


『あなたは、子供が好きですか? はいか、いいえでお答え下さい』


「なに、これ?」


 たったそれだけ。

 その他の情報は、一切書かれていない。


 そんなあまりにも怪しすぎるものだったけど、その時の私は酔っ払っていた。


「切手を貼らなくていいんなら、いっかあ」


 宛先を見たら、よく分からない会社名。

 それでお金が一切かからないのなら良いかと、私はお酒の勢いに任せて返送をしてしまった。


 それを後悔したのは、翌日の事で。


「何やってんだ、私」


 あんなに怪しすぎるものに、返送してしまうなんて。

 詐欺だったら、どうしようか。

 これから起こるかもしれない、色々な面倒事を考えると、憂鬱な気持ちになった。



 しかしそんな心配をよそに、それ以降しばらくの間は特に何も起こらなかった。

 ただの子供のいたずらだったのかな。そう思い安心して、そんな事も忘れていた頃。





 その日も、たくさんの郵便物の中に見覚えのあるハガキがまぎれこんでいた。

 私はそれを見つけた途端、寒気がおそった。

 この前とは違い、今日はお酒を飲んでいない。


 だから、ハガキの不気味さをものすごく感じてしまった。

 今回書かれていたのは、前とは違っていた。


『あなたは動物が好きですか? はいか、いいえでお答え下さい』


 また、たったこれだけしか書かれていない。

 私は前よりもじっくりと、ハガキを観察する。

 宛先の会社名と住所。

 それははっきりとあるから、私はスマホを取り出して調べ始める。

 どうせヒットしないか、詐欺会社として有名なんだろうなと思っていたんだけど。


「うわ、本当にある」


 その会社が、本当にあって驚いた。

 しかも普通の、別に怪しさなんてない所。


 それが分かったら、


「じゃあ、これも送っちゃうか」


 私はハガキを手に取り、今回も返送する事にした。

 どうせ前も送っているのだ。

 それなら二回送るのも、同じ事だと思う。


 そういうわけで、私はまたハガキを返送した。

 これが何の役に立っているのか分からないけど、まあ自分に不利になるようなものでは、きっと無いだろう。





 そしてそれから、不定期にそのハガキはポストに入っていた。

 毎回そこには質問が書かれていて、そのどれもにきちんと回答してから、返送した。


『あなたはぬいぐるみが好きですか?』


『あなたは音楽が好きですか?』


『あなたは家族が好きですか?』


『あなたは人間が好きですか?』


 そんなことを続けて、随分と年月が経った。

 私はいつしか、ハガキが来るのを楽しみに待っていた。



 しかし、そんなある日のことだった。

 ポストを開けると、小包が落ちてくる。

 私はそれを慌てて受け止めると、まじまじと観察する。

 手のひらで収まるサイズで、全く重くない。


 これは一体、何なのだろうか?

 私は首をかしげて、そして恐る恐る包みを開けた。


 中身が分かると、私は恐怖が無くなり面白いという感情が溢れ出す。

 それを取り出す前に、私は一緒に手紙が入っているのに気がついて、そっちを先に読む事にする。


『アンケートに答えていただき、ありがとうございます。その結果から、あなたに一番合うものを選びました。どうぞ、お使い下さい』


 それだけしか書いていなかったが、私は全てを理解した。

 そして中身を取り出す。


 これを使って、さて何をしようか。






 今まで、全部の質問にいいえと回答していて良かった。



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