五章六話

「あんなものを、人間が使ってはいけません。あれの実際のターナ値は最低十万です。そんな道具を何度も使うようなことがあれば、最悪この星の過去も未来もメチャクチャにされてしまいます」

「……分かったわ。あなたに協力する。私にできることがあればいつでも言って。でも、私はまだあなたのことを信じたわけではないから」

「あれ?萌子、どうしたの?桃ちゃんと仲直りしたの?」

振り向くと、萌子の後ろに侑里が立っていた。少し距離があるので、萌子と桃の会話は聞こえていないようだ。侑里がてくてくと歩いて近づいて来ようとするのを見ると、萌子は桃の方に向きなおし、素早くかつ鋭く告げた。

「ユリにはまだ言わないで」

桃が頷く。


「うわぁ――!」

一行は鬼の住んだ森に着いた。着いたのだが。

「うわぁ……?」

侑里は首をかしげた。「鬼の住んだ森」と言うくらいなのだから、どれほどの時間が経ったとしても林の一つは残っているのだろうと侑里は思っていた。ところが実際のところは一面に畑が広がっているのみ。畑の合間に実用的な防風林と、申し訳程度の木立があるのみである。「りんご狩り」「ぶどう狩り」「果物を、産地直送で」「いちご狩り」の文字がここに着くまでに見えたのが救いだろうか。

「なんだ楠木。資料をちゃんと読んでなかったのか?」

斎藤が侑里に言う。

「書いてあっただろう。森は全て人里に姿を変え、北部でも有数の規模の畑になったのだ、と」

侑里が首を横に振って、言う。

「確かに書いてありましたけど!それでも未だにこの一帯には「もり」という地名や苗字が多く残されているなんて書いてあったら大規模な原生林があるって期待するじゃないですか!」

「楠木先輩。以前この国にある大規模な原生林の位置について、社会科で習いませんでした?」

今度は桃が侑里に行った。国内の地理は、中学生の必修内容である。小学生でも中学生ほどの分量ではないにしろ、学習要項で扱うべきであるとの指示がある。大規模な原生林はここより北に少しいったところと、遥か西にあるのみ。ここには、存在しない。

「むー…」

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