第55話

あんまり内容は覚えていないけれど何だか怖い夢をみた。

カーテンを開けると今日は雨だった。雲が厚くてまだ夜みたいだった。

「おはよう」

部屋から出ながらそう言った。リビングには今日もキリ君とフウヅキさんが…

「あれ?いない…そっか、2人とも家に帰ったんだ」

私はそう言いながらいつもより広く感じるリビングを眺めた。そう言えば兄はどこに居るんだろう?

キッチンをみると作りかけの料理だけがあって兄の姿はなかった。

「お兄ちゃん?」

私はそう言いながら兄の部屋を覗いてみた。でもやっぱり兄はいなかった…家中探してみてもどこにも居なかった。

兄は時々朝ご飯の材料を買い忘れるとコンビニまで買いに行くことがある。多分今日も何か買い忘れて買いに行っているんだとは思う。私はいつも置いてある紅茶を自分のカップに注いで待つことにした。

カーテンを開けていてもリビングは薄暗いままだった。最近はいつもフウヅキさんが寝ころんでいたソファーに座ってみると妙にひんやりとした。

時計の針の音だけが部屋の中でやたらと大きく聞こえた。

「お兄ちゃん…遅いな…」

私はポツンと呟いた。

立ち上がって窓から外を眺めてみた。こう言うシュチュレーションの時に救急車の音で不安になって飛び出すみたいな話がドラマで良くあるけれど、確かに不安になる…このまま居なくなってしまったらどうしよう…私は一人になったら…不安でたまらなくなってしまった…私は気が付くと靴も履かずに家を飛び出していた。雨で全身がどんどんと濡れていった…それでも走った。周りの人はとても不審な目で私を見ていた。

「ケイト?」

そう呼ばれて、腕を掴まれた。

「お兄ちゃん?」

そこに居たのは確かに兄だった。兄は目を丸くしていた。私は自然と泣いていた。

兄は何かを失敗したときの顔をして私を強く抱き締めた。

「不安になっちゃたんだね、ごめん」

兄はそう言うと頭をコツンとぶつけた。私は兄の温もりに安心感を覚えたのかスッと体から力が抜けた。兄は足元を見ると少し溜息を吐いて私をお姫様抱っこした。

「も、もう自分で歩けるよ!?」

私はそう言ったけど兄は首を振って「駄目」と強く言った。そして人から隠すように私を抱き直すと

「帰ったらお風呂入ろうね」

と言った。

私は強く抱きつきながら頷いた。

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