第50話
フウヅキさんの怪我が悪化しました。
「それで学校が終わったら付き添う約束したのか?」
キリ君はそう言うと溜息を吐いた。
「お兄ちゃんがどうしても大学抜けられないらしくて」
私はそう言いながら鞄に荷物を詰めた。
キリ君は心配そうな顔で
「一人で大丈夫なのか?」
と言った。私は笑いながら
「大丈夫だよ~」
と言ってキリ君と別れた。でも…大丈夫じゃ無かったかも知れない…
「ケイト~見てよ~何かこれ見よがしにラブラブですって見せつけてるけどあのカップルの男、あと30分後には違う女と合う約束してるぜ~リア充爆発しろ!」
フウヅキさんはそう言うと次なるターゲットを探して目を細めた。私はフウヅキさんの袖を引っ張りながら
「やめてください!!」
と叫んだ。
フウヅキさんは人の幸せを邪魔するのが趣味なので街中に連れ出すととてもうるさい。手当たり次第に近くにいる幸せそうな人を不幸にしようとする。
「フウヅキさんはなんでそんな事するんですか?」
踏切の近くで私はフウヅキさんにそう尋ねた。フウヅキさんは嬉しそうに笑いながら
「それはねぇ~」
と言った時だった。突然フウヅキさんは走り出して一人の女性の腕を掴んだ。
「フウヅキさん?!」
私は急いで追い掛けた。
しかし、フウヅキさんは真剣な顔で女性に
「駄目だよ。そんな事したら…あのさ、今日の夕方、飛び切り良い事あるから。それでも嫌だったら後は勝手にしなよ」
と言った。女性はとても驚いた顔をしていたけれどポロポロと泣き出した。女性の手には仏花が握られていた。フウヅキさんは「絶対見つかるよ」と言うと私の所に走ってきた。
フウヅキさんは
「行こっ」
とだけ言うと私の手を引っ張って走り出した。
走りながらフウヅキさんは
「さっきの質問の答えだけどね。世界は不幸が無ければ幸福もないんだよ。対象になる物がなきゃいけない。だから幸せ過ぎる人は時々不幸になって自分が幸せな事に気付かなきゃ」
と言って笑った。
家に帰って「ただいま~」と言うと中から「おかえり~」と言うと声とシチューの良い香りがした。最近フウヅキさんとキリ君は家に入り浸って居るので一緒に晩御飯を食べた。ふとテレビをつけるとニュース速報で時効目前の殺人犯が捕まったと出た。フウヅキさんはそれを見るとスッと目を細めた。
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