第47話

俺の名前は奥山 晋太郎。しがないたい焼き屋だ。昔は屋台で営業していたけれど、今は駅前に店を構えている。屋台の方は時々、弟がやっている。


「おぃ…大輔。焦げてるぞ」

「ん?あっ…本当だ…ごめん、兄さん」

弟は随分と抜けた性格をしている。

「なんか心配事か?」

「うん…そうだね…何か嫌な予感がね…華糸ちゃん、元気かな?」

弟がそう言うときは大抵何かが起きる。

「おぃ。火止めろ。出掛けるぞ」

俺はそう言うと店を閉じて車のキーを取った。


華糸はうちの常連客だ。彼女が小学生の時からなのでかなり長い。ついでによく店の手伝いもしてくれるので結構お気に入りだ。

「それで、どこに行きゃあいいんだ?」

運転席に乗り込もうとしながらそう言うと運転は弟がすると言って車を発信させた。

弟は両親によく似ているから昔から不思議な力がある。それが俗に言う魔法なのか知らないが俺は魔法が嫌いだ。非科学とかのレベルじゃない。魔法は最後には不幸を呼ぶ…だから俺は華糸の兄は得意じゃない。

「兄さん、この路地入って…表通りで待ってるから」

弟はそれだけ言うと俺を車から降ろした。

路地に入ると始めに倒れている華糸が目に入った。見慣れない男が華糸を抱いていた…

「おぃ!兄ちゃん!!」

この男、華糸に手だしたんだったら一発殴ろうと思っていた。

「あっ、たい焼き屋のシンタロウさん」

そう言ったのは聞き覚えのある声だった。華糸の兄と言うことは分かったが面白いくらい姿が違った。

「おめぇさんに下の名前で呼ばれる覚えわねぇ」

俺はそう言いながら周りの様子を見た。何人かの人は携帯を手に警察に通報しようか悩んでいた。取り敢えずこの場を離れる方が良いと思った俺は取り敢えず華糸の兄の手から傷だらけの少年を取り上げて車に向かった。こいつらに何があったかは知らない。でも興味もない。取り敢えず、常連客が減るのは寂しいからな…それから、華糸が困る姿は見ていられん。

大輔は何を考えているのか分からないが取り敢えず彼らを家まで送った…


華糸は死んだように眠り続けていた。何となく心配で側を離れられなかった…

「ちょっと、髪染め直してきます」

華糸の兄は離れない俺をみてそう言って出ていった。

「お嬢ちゃんの兄さんは努力家だったんだな」

そう言いながら頭を撫でると華糸は少し嬉しそうな顔になった気がする

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