第46話
本当の事を言うとケイトは僕と出会う前から魔法を使っていた。たった一つだけど…
「今は…全部忘れよ」
そう言ってケイトの瞼を閉じさせた。すると黒い光は消えていった。ケイトは安心したような顔で眠り始めた…
「それが、ケイトの魔法なの?」
後ろにいたフウヅキが傷を押さえながらそう声を掛けてきた。
「うん…これがケイトが自分を守るために生み出した魔法…次に目が覚めたら今日あった事は全部忘れてるよ。ただ…この魔法が暴走するとこんな事になるなんて僕も知らなかったけど」
僕は壊れた街を見上げながらそう言った。
「そっか…それなら良かっ…た…」
彼はそう言いながら倒れた。
「フウヅキ!?」
僕はそう言いながら彼を受け止めようと手を伸ばした。しかし、それと同時に一瞬にして街の色とざわめきが戻った。
僕達は普通の路地に座り込んでいた。銀月館もなくなっていて、周囲の人はかなり不審な目で僕を見ていた。確かに全く似つかない眠っている少女と傷だらけの少年を両手に抱いて座り込んでいたら不審者だろう…
これでは通報されかねないと焦っていた時だった。
「おぃ!兄ちゃん!!」
と少しドスの聞いた声が聞こえた。嫌な予感しかしなかったのでソッと振り返ってみた。
するとそこには頭にタオルを巻いたどこかで見たことのある人が立っていた。
「あっ、たい焼き屋のシンタロウさん!」
僕が驚いたようにそう言うと彼はとても嫌そうな顔をして
「おめぇさんに下の名前で呼ばれる覚えはねぇ」
と言われた。
僕は笑いながら「すみません」と謝った。
彼はフウヅキを軽く持ち上げた。
「そっちの抜けた所にバン止めてあるからついてこい」
彼はぶっきらぼうにそう言うとサクサクと歩き出した。僕は慌ててケイトをお姫様抱っこして後をついて行った。バンには彼の弟のダイスケさんが運転席で待機していた。
「今、家まで送るから」
ダイスケさんは微笑みながらそう言うと僕達を家まで送ってくれた。ついでにフウヅキの治療やらケイトの様子も見てくれた。僕はその間に紳士に落とされた髪の色を元に染め直したり何時もの姿に戻した。
夜もふけた頃にギブス姿のキリ君が家を訪ねてきて土下座しながら色々と謝られた。そのままその日フウヅキとキリ君は家に泊まる事に…
僕はやっぱりケイトの事が心配でケイトの手を握りながら眠った。
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