第45話
鳥のさえずりと春の風を感じて私は目を覚ました。
確か私はキリ君と出掛けて転んで…それからどうしたんだっけ?
意識が段々とハッキリして私は周りを確認した。馴れた柔らかさは自分のベットだと言うことが直ぐにわかった。眼鏡が無いために周りは殆ど見えなかった。でも片手は強く暖かなものに拘束されていた…
私はもう片方の手を延ばしながら
「お兄ちゃん?」
と声を掛けた。サラサラとした髪に手を通しながら兄の顔に触れた。目元に触れるとカタンと眼鏡に指が引っ掛かってしまった。
眠そうな、でも聞き慣れた声が「ケイト?」と私の名前を呼んだ。
「お兄ちゃん、おはよう。今日もいい天気みたいだね」
私は体を起こしてそう言った。兄は何も言わずに私を強く抱き締めた。顔は見えないけれど泣いてるのがわかった。
「どしたのお兄ちゃん?!」
私が驚いてそう言うと兄は一旦離れて
「痛いところは!?」
と言った。
私はキョトンとしつつも
「別にどこも痛くないよ?」
と答えた。すると兄は「良かった~」と言いながらまた抱きついてきた。
「お兄ちゃん!苦しいよ!!」
私はそう言いながら兄を押し返そうとしたけれど一層強く抱き締められた。私は兄の背中に手を回して兄のおでこに自分のおでこをぶつけて「変なお兄ちゃん」と言って笑った。
いつも通りの朝。天気が良くて、お兄ちゃんが隣にいて。お兄ちゃんが隣いる。それが一番大切な事。それだけで笑顔になれる。
私を散々抱き締め終えた兄は安心したのか
「朝ご飯にしよ」
と言って一緒にリビングに出た。
「おはよう…」
「おっはよ~」
扉を開けると何故かキリ君とフウヅキさんがリビングでくつろいでいた。私はパジャマのままだったからちょっと驚いたけれど、二人の姿の方に驚いた。キリ君は人の姿に戻っていて片手がギブスになっていた。フウヅキさんはと言うと全身包帯まみれだった。
「二人ともどうしたの?!」
私が驚きながらそう尋ねると男性三人は顔を見合わせて
「ちょっとね」
と笑った。私が眠っていた間に何があったのか分からないけれど、なんだかそれも私の日常と言う気がして自然と笑みがコボレた。
四人で朝食を取りながら一つだけ最大級に分からない事があった。
「お兄ちゃん…このカレンダー日付が一年前何だけど…」
けれど兄は「それで合っているよ」とだけ言って笑った。
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