第41話

ボクはコウキが好き。コウキはボクを無視しないから好き。コウキが好きなケイトも好き。ボクは基本的にみんな好き…


魔法が世界を浸蝕する音が聞こえて来るとすぐに世界から色が無くなった。この世界で色があるのは自分だけ…目の前にいるコウキも色を失っていた。

「世界がこのままだったらヤだな…」

ボクはそれだけ呟いてお湯を沸かしていた炎に息を吹きかけた。炎は色を取り戻して再び水を沸かし始めた。

神社を守るのが役目のボクはコウキの様に魔法は使えない。でも、“封付家”が代々受け継いできた呪術は使える。

ボクが受け継いだ大まかな力は少し先の未来が見える事と真実を見抜く事、それから無理矢理変えられた理を戻す事。それでも力は弱いから完璧ではない…

ボクは静かな世界で抹茶をたてるとそれをコウキに流し込んだ。呪術の力を込めてたてたこのお茶なら一度は人にかけられた魔法も解けるだろう…予想通りコウキは咳き込みながらも動き出した。

「よかった」

ボクはそう言いながらもう一杯コウキに抹茶を出した。本当ならこんな事を伝えたくはなかった。コウキが苦しむのが分かっているから。でも…

ボクはボクにわかった全てをコウキに伝えた。奴はボクと似てると思った。

予想通りコウキの顔が歪んだ。コウキがあまり表には出さないだけどコウキの本当の顔。魔術師の顔だ。魔法の源…それが彼をこんな顔に変える…

きっと何かが聞こえたんだと思う。コウキの顔が…違う…魔術師の顔がさらに歪んだ…

「ケイトが悲しむよ…ボクも」

多分この言葉はコウキに届いていない…それでも言葉に変えてみた…

「でも…声が弱すぎて何処にいるのか分からない」

コウキはそう言った。きっとケイトはコウキに助けを求めたんだ。ボクは少しホッとした。ケイトも変わったんだ…そう思った時だった。コウキが叫んだ。

「ケイトは人に助けを求めない!それに!」

多分コウキ自身はもう少し落ち着いて喋っているつもり何だろうけど端から見れば落ち着きの欠片もなかった。コウキのこういう姿を見る度にボクは少し落ち着く。

「落ち着けよ、コウキ」

そう言いながら彼の頭に手を置いた。それから慎重に

「ケイトだって成長してる。きっとチャンスがあるよ」

と言った。それを聞いたコウキの顔はいつもの顔に近付いた。でもその目には決意の光が見えた。

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