第40話
初めてケイトと出会った時…ケイトは義父の少し後ろで自分のスカートを握り締めて怯える目でこちらを見ていた。その姿に僕は違和感を覚えた…少女の目は年齢の割には酷く濁っていた。そして義父の行動一つ一つに体を震わせていた。特に“新しい家族”と言う言葉に怯えた。だから僕は笑顔を作ってから彼女に身長を合わせるように膝をついてこう言った。
「初めまして。僕は幸季って言うんだ。良かったら僕と友達になって?」
その言葉に義父と母は「友達じゃなくて家族でしょ?」と笑った…
色が無くなるのと共に体が動かなくなった。それでも意識は残っていた。何処でケイトが怯えているのがよくわかった…今すぐケイトの所へ行きたい。でも、どうすれば体が動かせるのかが解らない…僕は頭の中で必死にこの状況を打破する方法を考えていた。
その時だった…
口の中に苦いものがなだれ込んできた。しかもとても熱くて蒸せた…
「くっ苦しい…」
僕はそう言いながら咳き込んだ。
「よかった…」
フウヅキはそう言うとホッと息を吐いた。そして抹茶を立て直すと僕の前に出した。僕はその抹茶をゆっくりと飲んだ。彼はそれを見ながら口を開いた。
「コウキ…これをした奴が何をしたいかボク分かったよ。ボクこいつ嫌いだ」
彼はそう言うと苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ケイトを魔術師にしようとしてるの?」
僕はそう尋ねた。でも彼は首を振った。
「ケイトはどうでもいいんだよ。こいつは単にコウキ会いたいんだ。それだけ」
彼はそう言った。
「つまり僕のせいで二人があんな目にあってるわけ?」
問いかけるようにそう言ったけれど彼は何も答えてくれなかった…部屋の中にあった鏡に写った自分、顔は過去の自分の顔だった。“こんな顔…ケイトには見せられないな…”そう心の中で呟いた時だった。
『お兄ちゃん…』
ケイトの声が響いた。
「ケイトが呼んでるよ」
彼にも聞こえたらしく彼がそう言った。
「でも…声が弱すぎて何処にいるのか分からない…」
僕はそう返した。悔しさで少し声が震えた。
「ケイトは人に助けを求める事をしない…それに傷が開けば抵抗もしない…どうすればいいんだ!」
僕は叫んだ。
「落ち着けよ、コウキ」
彼はそう言いながら僕の頭に手を置いた。
「ケイトだって成長してる。きっとチャンスがあるよ」
僕は彼の言葉を信じることにした…
絶対にケイトを魔術師にはしない!
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