第23話
外はまだ寒くても家の中なら日差しが暖かくてぽかぽか気持ちいい日がある。そんな日は何だか小さな頃の事を思い出す。
あれはまだ義兄と出会って間もない頃だった…
私の家はどちらかと言えば裕福な家庭だ。
なので両親と暮らしていた頃はそれなりに大きな家に住んでいた。三階建ての屋根裏付きだった。屋根裏はそんなに広くはないけれど日当たりがよくて子供部屋になっていた。
あの日は確か春休みを目前に控えた日曜日だった。両親は日曜日でも仕事をしていたので兄と家に二人きりだった。
両親を送り出すと私は兄と子供部屋に向かった。
扉を開けた瞬間、ふわりと暖かな空気が私の足をくすぐった。それでも冬なので部屋の中はそれなりにひんやりしていた。
すると兄は悪戯を思い付いたようににっこりと笑って下へ降りていった。私は部屋で兄に読んで貰おうと絵本を選ぶ事にした。
少し経つと階段からズルリ、ズルリと言う音が響いてきた。そしてバサーと音を立てて大きな掛け布団がなだれ込んできた。
私が驚いていると兄は笑いながら私を窓の方へ手招きした。兄は布団でかまくらを作ったと言っても出入り口はなくて少しだけ息苦しい感じだった。でもなんだか秘密基地のようでもあってワクワクした。窓から差し込んだ光は布団を透き通ってとても綺麗だった。
兄は話を作るのが得意でかまくらの中では確か3匹のヒヨコの話をしてくれた。黄色いヒヨコと殻が付いたままのヒヨコと白色のヒヨコの話。確か3匹は一番暖かい場所を求めて旅に出た。でも結局、母鳥の羽の下が一番暖かかったと言うような話しだった。
そんな話を聞いている間に私はだんだんと眠たくなってしまって結末を聞いた頃には殆ど眠っていた。兄が優しく一度だけ頭を撫でてくれていたのをよく覚えている。
それから何時間か経って私は目が覚めた。多分昼過ぎくらいだったと思う。すると私の隣で兄は寝息をたてながら眠っていた。私は何だかその寝顔が可笑しくなってクスクスと笑った。兄は眠ったまま少し顔をシカメた後でいつもの様に笑って、頭を撫でる仕草をした。
その頃はまだ兄の事も信用していなかった。でもその時に何だか信じてみても良いような気持ちになって、兄の伸びていた腕にチョンと頭を載せてみた。何だか安心感を覚えて私はまた眠ってしまった。
次に起きたのは夕方だった。兄はとても嬉しそうに「ケイトちゃん、おはよう」と笑った。
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