第21話
ある日、学校から家に帰ると部屋の中から義兄の陽気な鼻歌が聞こえた。
「お兄ちゃん、ただいま」
直ぐ後ろでそう言うとやっと兄は私に気が付いて
「ごめんね~おかえり~」
と言った。
「楽しそうだったけど何やってるの?」
そう言いながら兄の手元を見ると兄の手元には綺麗なパレットがあった。
「わぁ~綺麗!」
私がそう言うと兄は笑いながらまた手を動かし始めた。
パレットから色を取ってクッキーの型に流し込んだ。すると色は少しだけ膨らみながら固まった。それと同時にフルーツの少し甘い香りがふわりと香った。
「これは蝋燭?それとも石鹸?」
私がそう言うと兄は笑いながら
「今日のおやつ」
と言った。
「えっ…」
私は少し固まった。食べ物にしては少し色が鮮やか過ぎる…
「え~と、また飴?」
私は少し後ろに下がりながらそう尋ねた。兄は手元だけ見ながら、
「違うよ。グミ」
と言った。
「あぁ、グミ…そう…グミ。私、ちょっと着替えてくる。あと、キリ君に渡す物があるから隣に行ってくる」
私はそろりそろりと自分の部屋へ逃げ込んだ。
「うん。わかった」
兄は心ここにあらずと言うように返事をした。
兄は基本的に料理もお菓子作りも上手い。でも、時々実験を始めるのだ。食べ物で。
昔に一度とても鮮やかな飲み物を飲まされた。
それはとてつもなく恐ろしいかった…
「きっキリ君!開けて!!入れて!!」私は隣の家の玄関を叩いた。
中からは目を丸くしながら缶詰めの蜜豆を食べているキリ君が出てきた。
私はそのままキリ君を家から引っ張り出して自分の家に連れ込んだ。
「お兄ちゃん!キリ君が来たよ~」
玄関を入って私がそう叫んだ。
「ちょっ!!俺は何も!!」
キリ君はスプーンを加えながらそう言った。
「い、い、か、ら!」
私はそう言ってキリ君を座席につかせた。
「やあ、キリ君いらっしゃい。丁度おやつが出来たんだ」
兄はそう言うと先ほどから作っていた色鮮やかなグミを出した。
確かに綺麗なんだけど、私は食べ物ではない気がして仕方なかった。
「あっ懐かしい」
キリ君はそう言うと何も躊躇わずに食べた。
「外国にはこう言うお菓子が多いんだよ」
兄はそう言うと私の頭をぽんぽんと叩いた。
勇気を出して一つ食べて見るとそれは意外と美味しかった。あまり見た目や過去の記憶で判断してはいけないと思った。
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