第19話

義兄と私は小さな頃いつも手を繋いで歩いていた。

特に学校の帰りは絶対に手を繋ながら帰った。

それは今も変わらなくて、正門にいる兄は私の姿を見るとサッと手をだす。

「おかえりケイト。今日は何があった?」

兄は私の手を優しく握りながらそう尋ねる。

「今日はね~」

私は小さな子供の様に兄に今日あった事を話す。

こうやっていると嘘が付けない。

ついても直ぐにバレてしまう。

でも、それはお互いで私も兄の考えている事が分かる。


兄は決して口下手な訳ではない。でも、大切な事は手を握って伝える。

小さな頃からそうだった。


私は不安になるといつも兄の手を握っていた。

何だかそうしたら安心する。

兄の手からは様々な思いが溢れている。自分で自分の手を握っても分からないけれどきっと私の手からも様々な思いが溢れているのだと思う。


だから、私にもきっと兄の様に誰かに手で思いを伝えられるかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る