第16話
とある季節代わりの嵐が通り過ぎた日。嵐の風に鉢植えを割られた兄は突然花見に行こうと言い出した。そして池のほとりには一本だけ桜が満開に咲いていた。
「わぁ~綺麗!他のは一本も咲いていないのに」
私は気に駆け寄って満開の桜の木を見上げた。
「ここは毎年この町で一番に咲くんだよ」
兄はそう言いながら私に笑いかけた。
「長い間だ住んでたけど知らなかった」
私がそう言うと兄は
「ケイトはまだ若いからそれでいいんだよ」
と言った。
そして足元を見るとすでに茣蓙が引き終えられていた。そして…
「いやぁ~茣蓙っていいよね~春って感じ。でもクッション欲しい~」
そしてそこにはいつの間にかフウヅキさんが寝ころんでいた。
「おぃ!なんでフウヅキが居るんだよ!!」
兄は少しキレ気味にフウヅキさんを蹴飛ばした。
「ボクはボクに呼ばれて来たんだのよ」
兄に蹴飛ばされて芝生の上に転がされたフウヅキさんは少し恨めしそうにそう言った。キリ君はと言うと、彼はすでに茣蓙の隅っこに座り込んでいた。
兄は溜め息を吐きながら茣蓙の真ん中に重箱を広げだした。
「ほら、ケイト。ケイトはお兄ちゃんの横に座って」
兄にそう言われて私は兄の隣に座ることにした。兄は桜の木のすぐ下に座っていたので私は池側に座っている。
「おっ旨そう~いただきま~す」
フウヅキさんはそう言うと二段目に入っていた三色オニギリをひょいとつまんで口に運んだ。
キリ君は一段目の煮豆をもそもそと食べている。
「こら、君達行儀悪いよ!」
兄はそう言いながら三段目のデザートの入った部分だけをわざとらしく木の根元に置いた。
私がそれをジッと見ていると兄はお皿にオニギリやおかずを乗せて私に渡した。
そしてにっこりと微笑んで
「頑張って作ったから喜んでくれると嬉しいな」
と言った。
「良い香り、美味しそう!」
私がそう言うと兄は一層微笑んだ。
それから、四人で雑談しながらお弁当をつついていると唐突に兄の表情が変わった。と言っても見た目はいつも通りの笑顔だけれど…
その瞬間、桜の根元に置いてあった重箱の蓋が開く音がした。
兄の影からそっと桜の方を見るとそこには兄の作った桜餅をくわえている、茶色のロングブーツにミニスカートのゴスロリ着物を着たツインテールの二十歳くらいの少女がいていた…
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