第14話
目が覚めると昨夜の大荒れの天気が嘘のように窓の外はいい天気だった。私は一度伸びをすると手探りで眼鏡だけ掛けて部屋から出た。
リビングには爽やかな風が吹き抜けていてベランダを見るとそこでは兄が背中を丸めて何だか落胆していた。
「お兄ちゃん、おはよ。どうしたの?」
私がそう声をかけると兄はゆっくりとこちらを振り向いて
「おはよう、ケイト…」
と言った。兄の手元を見るとそこには兄が大切にしていたクリスマスローズの鉢植えが粉々になっていた。
「あっ昨日の風で…」
私がそう言うと兄はぶんぶんと首を振って
「違う。わざとだ」
と行った。私が首を傾げていると隣のベランダから歯ブラシを加えたキリ君が顔を覗かしていた。
「キリ君、おはよ~いい天気だね~」
私がそう言いながら手を振ると彼はいつも通りの無愛想な顔で手を振替してくれた。
「よし!決めた!」
私達がそんなやり取りをしていると突然に兄はそう叫んで立ち上がった。
「何を?」
私がそう訪ねると兄は握り拳を作りながら
「花見!二人とも学校昼まででしょ?!」
と言って家の中にドカドカと入っていった。
兄は大人しいと言うイメージがあるかも知れないが、実際はキレやすいし、子供っぽい。
私は兄の用意した朝食を食べてさっさと学校に行く事にした。
「二人とも寄り道せずに帰るんだよ!」
兄はそう言って私達を学校に送り出した。
「ねぇ、キリ君。お兄ちゃんは何をしようとしてるんだろ?」
通学路を歩きながら私はキリ君にそんな問いかけをした。
何故なら彼も魔術師だからだ。ただし見習いらしい。
「多分、春を捕まえようとしてる」
彼は少し首を傾げながらそう言った。
「えっ春を?どうやって?」
私が詰め寄るようにそう尋ねると彼は少し困ったように後ずさって
「俺は会った事無いけど、季節は一人ずつ代表者がいるんだ。その精霊が季節を替えにくるんだ」
と言った。
私が「ん~」と眉間に皺を寄せていると彼は付け加える様に
「昨日の夜は冬の代表者と春の代表者が凄く暴れている魔力を感じた」
と言った。
「何だかますますわからない」
私がそう言うと彼はフッと口元を緩ませて
「きっと、昼に家に帰ればわかるさ」
と言ってスタスタと歩いて行ってしまった。
兄は一体何をしようとしているのか…
でもその前に、私は今目の前のやることをこなそうと思った。
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