第12話
日常、幸せとは気が付かないだけで沢山転がっている。私の義兄はそんな日常の小さな幸せを気付かせる魔法を使える。
私はそんな力を持つ兄が自分の兄になってくれた事を本当に幸せだと思う。
もちろんそんな力が無くても兄が私の兄になってくれた事は本当に嬉しい事だ…
「コウキぃ~コウキぃ~」
一人の小柄な少年が手を振りながらこちらに走ってきた。
「フウヅキ、どうした?」
僕が手を広げて待ちかまえていると彼は僕の胸にボフッと音を立てて飛び込んできた。
彼はそのまま僕にギュッと抱きついて
「幸せな匂いがする」
と言った。
そして僕のポケットに手を突っ込むとポケットの中にあった飴玉を取り出した。味は僕の好きなミルクティーの味だった。
「あれ?そんなの入れてた?」
僕がそう言うと彼はニンマリと笑って
「本当は君が昼過ぎにボールペンを貸してと頼まれて手を突っ込んだ時に見つけるはずだった。ちなみに入れたのは三日前」
と言った。そして僕を突き放す様に離れると袋の端を加えて目を細目てこちらをみながらながら
「知らずにこれを見つけた君は幸せだっただろうね~」
と言った。
僕はそれに敢えて笑って見せ
「別にそれがなくっても君が幸せな顔を見れたらそれで僕は幸せだよ」
と言った。
「ボク、コウキのそう言うとこ好きだけど嫌い」
彼は不服そうにそう言って口を尖らせた。彼ことフウヅキとは小学校以来の一番の友人だ。彼は昔からかなり変わり者だった。彼の趣味は人の幸せを食い物にする事だった。
でも、何故か僕に妙に懐いていて、ケイトとも気が合うらしい。なので家にもよく遊びに来る。と言うか帰ったら家にいる。
僕がぼ~と彼の顔を見ていると彼は溜め息を吐いて「今日、家に帰ったらきっと凄く幸せな事があるよ」と言うと走って行ってしまった。
「結局、飴盗られた…」
僕がふっと溜め息を吐くと何処からかケケケと彼の笑い声が響いた。
それからすべての講義を終えて家に帰ると「おかえり!」とケイトの元気な声が響いき玄関まで迎えに来てくれた。そして嬉しそうに「調理実習でクッキー美味しくできたの!」と言って僕を部屋の中に引っ張り込んだ。
「やあ、おかえり」
ダイニングテーブルを見ると何故か美味しそうなクッキーと共にフウヅキが居た。
僕は複雑な顔で笑うしかなかった。
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