第30話 難易度
「次は料理長から料理の説明」
あの細い魔法工学科の先輩が今度は座ったままで口を開く。
「魔法工学科2年の三輪朗人です。今日の料理はタイ風で、メインはカオマンガイ。茹で鶏ごはんです。このまま載せてある鶏肉と食べてもいいし、適当にソースをかけてもいいです。
鶏肉のおかわりは出ている以外に冷蔵庫にも用意しています。ゼラチン部分が味の決め手なので冷たいままです。ソースは揚げ物と共通で3種類用意してあります。
唐揚げはまあ見たとおり、鳥とタラの唐揚げです。
これもソースをかけて食べて下さい。
キノコとたまごの炒め物はまあ、そのままで。
サラダは青パパイヤのサラダ、ソムタムです。これはもう味がついています。甘辛酸っぱいサラダです。苦手な方はポテトサラダを用意しました。
スープはココナツミルクと鶏肉のスープ、トムカーガイです。今日はちょっと酸っぱさ控えめパクチー控えめで作っています。パクチーは刻んであるので必要な方は入れて下さい。
あと、別スープとして本場風トムヤムクンも用意しました。こっちは遠慮の無いがっつり辛いスープです。20人分は用意したので食べてみたい方はキッチンへどうぞ。奥の寸胴に入っています。
こんなところかな。まあ2年生以上はご存じの通りです。食べ方も特にルールとか気にせず、好きなように食べて下さい」
何か妙に本格的だ。
それにこれ、1人で作れる量なのだろうか。
14人分という事もあって無茶苦茶分量がある。
時計を見るとお風呂を楽しんだ時間は1時間ちょっと程度。
でも出前を取れる店って、多分ホテルくらいしか無かったような……
「それでは、いただきます」
「いただきます」
小学校の給食よろしく皆で唱和して食べるようだ。
まあそれも悪くは無いだろう。
まずは御飯から食べてみる。
米が日本米ではなくいわゆるタイ米だ。
そのままだと鶏肉由来の優しい味。
言われているようなパサつきとかは感じない。
2口目は鶏肉をちょっとスプーンで切って一緒に食べる。
うん、美味しい。
そして次はスープへ。
ちょっと食べた事がない味なので最初は美味しいかどうか判断出来ない。
優しい甘さにちょっとだけ酸味。
あとは私の知らない香辛料系の香りがする。
もう1口食べてみると美味しさがちょっとわかってきた。
うん、これは美味しい。
慣れると癖になるかもしれない。
次はちょうど誰も今の瞬間取っていなかったサラダを小皿へ。
ソムタムという方だ。
既に先輩方は山盛り取っている。
だから大きいガラスボールに半分位しか残っていない。
食べてみるとこれは酸っぱ辛い系。
ちょっと独特の臭いも若干感じる。
スープよりちょっとだけ難易度が高いかな。
でも美味しい予感がする。
食べ慣れると美味しく感じる予感が。
なので3連続で口へ。
うん、美味しさを理解した。
これは美味しい。
とすると……
そう思ったところで前にお椀が置かれる。
中には見た目にも赤い辛そうなスープ。
「試しに食べてみな。辛いのさえ大丈夫なら試す価値はあるよ。あと、ここの食卓は先輩後輩関係なしで早い者勝ちだからさ、遠慮するなよ」
愛希先輩だった。
「ありがとうございます」
早速一口食べてみて気づく。
これはソムタム以上に難易度が高い。
辛さと酸っぱさと今まで食べた事のない違和感。
でもその中に確かに美味しそうな雰囲気というか予感を感じる。
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