第25話 夕食のお誘い

 何かそんな騒動があったおかげで。

 篠原さんまでいつの間にか馴染んでしまった。

 本来戦いを挑みに来た筈なのに。

 これが意図的なものなら大したものだと思う。

 微妙に否定しきれない気もするけれど。


「出来れば全員名前の方で呼んで欲しいな。皆そうしているから」

 と言われたので。

 私もこれからは名前で呼ぶ事にしよう。


 そんな習慣保育園以来無かったな。

 そう思って訂正。

 絵里、美紀、亜理寿に続いて2度目か。

 どうも私の人生、今までとかなり具合が変わってきているらしい。

 これでいいのか悪いのか。

 取り敢えず流されてみようと思う。


「ところで咲良、律花。今日これから夜まで、予定何か入っているか?」

「特に、何も無いです」

 と、咲良さん。

 私も頷く。


「朗人、大丈夫か?」

「2人位は誤差ですよ」

 向かい側の細めの男子学生、朗人先輩が当たり前のように言う。

「ただ今日は例の場所、時間入れ替え制にした方がいいと思うけれど」


「ま、そうだな。香緒里先輩と由香里先輩に連絡しておくよ」

 そう言って松原、いや愛希先輩はスマホを取り出す。

 メールか何かを打っているようだ。

 何だろう。


学生会うちにはちょっとしたたまり場があるんです。よろければそこで一緒に夕食をいかがですか。夕食と言ってもお店じゃなくて朗人君が作るんですけれどね。学生会に入る入らないじゃなくて、単なるご挨拶のようなものです。勿論お代とかはありませんから」


 沙知先輩がそこで説明。

 ちょっと考える。

 思い当たるのは……

「前に副会長さんが言っていた、保養所ですか」

「そうか、律花には言っていたな。そうそう。保養所と言ってもマンションの1室だけれどさ」


 どうしようかとちょっとだけ考える。

 以前の自分なら間違いなく断っている。

 これが別の街での話だったらやっぱり断っている。

 でも、まあ。


「お願いしていいですか」

 咲良さんも頷いた。

「勿論!」

 愛希先輩がそう言ったところで学生会室の扉がノックされる。


「はい、どうぞ」

 青葉先輩が答えたところで扉が開いた。

 副会長さんだ。

 名前で呼ぶと理奈先輩だな。


「どうだった、理奈」

「今年の1年生はなかなか元気があっていいですわ」

 そう言えば美紀が言っていたな。

 今日の相手は副会長だって。


「今日はどんな対戦形式だったのですか」

 思わず聞いてしまう。

 篠原さん、いや咲良さんも興味がありそうだ。

 身を乗り出している。


「アスレチックみたいな物ですよ。氷魔法で罠混じりのコースを作りました。行動不能にならずに最後まで到達できたら私と勝負って感じです。

 直接攻撃はお互いスポーツチャンバラ用のソフト剣限定で、相手に怪我をさせない限り補助的に魔法を使うのは自由というルールで。

 1人か2人最終ステージに着けばいいなと思ったのですが、5人も到達されてしまいましたわ。亜理寿ちゃんも最後まで来ましたよ。水を使う魔法使いと2人組で」


 亜理寿と組んでいる魔法使いというのは多分美紀だろう。

 なかなか頑張ったようだ。


「でも、どうせ全員叩きのめしたんだろう」

「それが私の役目ですから」

 理奈先輩はこともなげに言う。

 この人もやっぱりかなり強いようだ。

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