第26話 保養所
「ところで愛希、景気づけか何かで魔法を思い切りよく爆発させませんでした、今日の放課後?」
愛希先輩がぎくりとした表情を浮かべる。
「ごめん、ひょっとしてそっちに教授会あたりから問い合わせが行ったか?」
「ゲーム中に魔法が岩に当たったようですと答えておきましたけれどね。熱線で物質を膨張させて爆破するのは愛希の得意魔法ですよね」
ん、それはひょっとして。
というかきっと、間違いなく……
「ごめんなさい。ひょっとしたらそれ、私です」
「えっ?」
理奈先輩が意外そうな顔をする。
「てっきり愛希が景気づけに爆発させて、痕跡を風魔法で削ってごまかしたとばかり思ったのですけれど」
「まあ色々あったのですわ、理奈先輩。首謀者は愛希先輩であっていますけれど」
これは沙知先輩。
「でしたら爆破した方もその後岩を削った方もなかなか優秀ですわね。まあそれはそれとして、そろそろ片付けに入りませんか。運動したので汗を流したいところです」
「そうだね」
との事で部屋を片付けに入る。
◇◇◇
校門前の渋滞はなくなっていた。
下校時刻が近いせいだろう。
全員で校門からスーパーの方へと歩いて行く。
スーパーの角を曲がり、パン屋の前を通って。
一番手前の一番高いマンションへと入る。
どう見ても高級マンションだ。
エントランスがいかにもという大理石。
それなのにあっさり掌紋認証で玄関を開き、そしてエレベーターへ。
さすがにこの人数だとエレベーターもいっぱいいっぱいだ。
何階を押したかは私からは見えない。
エレベーターが動き、そして止まる。
外へ出る時に表示を見ると10階、最上階だ。
エレベーターホールからさっと確認したところ、この階の玄関は2箇所しか無い。
これって相当お高い部屋なのでは無いだろうか。
学生会のみなさんは何も気にしないように片方の玄関を掌紋認証で開け、中へ。
そんな訳で私も続いて入り……
確かにこれは保養所だ。
入った瞬間私は納得してしまった。
玄関入ってすぐ左にぶら下がる『聟島温泉』の提灯。
先に見える広い畳敷きの広間。
いかにもという感じの座卓と座布団。
窓がカーテンのところを見ると洋間から和室に変更したのだろうけれど。
そして、
「御飯が出来る前にひとっ風呂入ってこようぜ」
と言う声で、女性陣がぞろぞろと玄関から見て左の方の部屋へ。
そんな全員で入れる程広いお風呂なのだろうか。
「さ、さ、こっち」
と愛希先輩に誘われるままにその部屋へ。
部屋自体は普通の部屋。
10畳位かな。
和室で片面に扉無しの更衣ロッカーのような箱がずらりと並んでいる。
沙知先輩は私と咲良さんにセットらしき一式をそれぞれ渡してくれる。
見ると浴衣とタオル2枚だ。
「ロッカーは空いている場所を適当に使って下さいね。ボディシャンプーとシャンプーとリンスは洗い場に置いてあります」
沙知先輩の言葉は完全に大浴場の説明だ。
でも皆が服を脱いで向かっているのは外のような気がする。
入口というか出口はどう見ても掃き出し窓。
曇っていて風景は見えないが明るさからしてその先は外。
「まあ、百聞は一見にしかず、という事ですわ」
沙知先輩はそう言って窓の外へと消える。
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