第23話 魔技高専学生会長
砂埃が舞う。
篠原さんの魔法は風らしい。
竜巻が4本現れて、そして同時に松原先輩を襲う。
松原先輩はすっ、と言う感じで横に滑るように動いてそれを避ける。
「うーん、人使いの荒い魔法ですわね」
横で綱島先輩、いや沙知先輩がぼそっと呟いた。
どういう事だろう。
「もうすぐ飛行機の時間なので、邪魔にならないよう標高75メートル位であの竜巻をカットしています。移動魔法と同じ系統の空間操作魔法ですけれどね。このために愛希先輩は私を連れてきたのですけれど」
うわっ。
何気に沙知先輩もとんでもない魔法使いだ。
「沙知先輩の本来の魔法は空間操作魔法なんですか?」
「元々は探知魔法、レーダーのような魔法ですね。まあ他にも色々使えますけれど」
底が見えない。
1年と3年でこうも違うのだろうか。
「さて、咲良さんが別の攻撃に移るようですよ」
今度は竜巻そのものは見えなくなった。
でも砂煙は所々で起きている。
そして松原先輩はさっき以上の速度で右へ左へと動いている。
「あの付近は強烈な気圧差と風圧とでかまいたち現象が起きています。それを愛希先輩が移動だけで避けている状態です」
移動だけ、と言ってもその動きが普通じゃない。
跳んで跳ねて寝てそのまま横移動して。
色々常識や物理法則を無視した動きをしている。
「あれってどうやって動いているんですか」
「風魔法と物理移動魔法の組み合わせですね。積み木を振り回すのと同様に自由に動けるという愛希先輩ならではの魔法ですわ。
あれを使っているという事は咲良さんの攻撃が的確だという事です」
そして。
愛希先輩の動きが止まった。
周囲の砂埃は変わらないままだけれど。
「愛希先輩も疲れたんでしょうね。かまいたちを風魔法で相殺する方法に切り替えたようですわ」
そして今度は砂埃そのものが静まった。
「かまいたちの原因そのものになる風魔法を相殺している状態です。つまり咲良さんの魔法は分析されてしまったようですね」
これは厳しい。
松原先輩が強すぎる。
「愛希先輩の本来の魔法は熱なんですけれどね。昨年から大分色々他の魔法も自由に使えるようになって。今では工作魔法や治療魔法のような専門的知識が必要な魔法以外は大体使えるのではないかと思います」
松原先輩はそのままとことこ歩き始める。
篠原さんは他にも色々魔法を使っているようだ。
でも全く事象面の変化が見られない。
魔力の動きで魔法が幾つも発動しているのはわかる。
ただそれを松原先輩に相殺されてしまっているのだ。
そして松原先輩はぽん、とジャンプして咲良さんにデコピン。
その瞬間、また沙知先輩が移動魔法をかけ、2人の近くへと私達は移動する。
「惜しかったなあ。最初の竜巻か、次のかまいたちでもう少し工夫すればチャンスはあったんだけどな」
「慰めはいいです」
篠原さんは相当気落ちしている感じ。
「例えば竜巻、あれで私の周囲全体を一気に巻き込めば私の動ける余地が大幅に減る。その上で竜巻の大きさを一気に縮小するとか内部で別の攻撃魔法を使うとか。かまいたちだってもう少し攻撃間隔が短いか場所的余裕を無くせば連続して避ける事は出来なくなる。他にも色々方法はあると思うな」
「でも移動魔法を出させるところまでいけませんでした」
「逆だよ。かまいたちなんて使われたら不用意に移動した方が危ない。だから今回は安全策をとった訳。まあ今は偉そうに色々言っているけれど、1年の最初の時にルイス先輩と詩織先輩にコテンパンにやられているしな、私も」
「確か前にWebに書いていましたね」
沙知先輩がそう言って笑う。
「ああ、あの時も詩織先輩にデコピンされたな。まああの真似なんだけれどさ、今回のルールも。さてと」
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