第2章 魔技高専学生会
第15話 本日2回目の勇気
放課後、私は学生会室へ向かっていた。
パソコンの購入申し込みのためである。
申込窓口は特になく、留学生会室か学生会室へ直接行けばいいらしい。
ネットでも買えるらしいが私はネットに接続できる機械を持っていない。
なお3人は既にパソコンは用意してあるとの事だった。
まあそれが普通だよな。
亜理寿についでにあの人の偵察に行かないかと言ったが断られた。
亜理寿と美紀は攻撃魔法系の研究会を見に行くとの事。
そんな訳で私は1人だ。
出来れば綱島先輩に会えるかなという下心が無い訳でもない。
まあ会ったからどうという事は無いのだけれども。
まあこの前の礼を言う程度だろう。
そんな訳で。
校舎の2階端っこの学生会室の前へ。
知らない部屋を訪問するのは緊張する。
ドアの前で深呼吸2回して。
本日2回目の勇気を振り絞る。
ちなみに1回目とは絵里に最初に話しかけた時だ。
意を決してドアをノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
中へ入ると女性ばかり4名。
小柄な会長と綱島先輩の他2人もオリエンテーションで見た顔だ。
「どうしました?」
綱島先輩が聞いてくれる。
「中古パソコンの斡旋をしていると聞いて、申し込みに来ました」
「ああ、あのパソコンね。ただあれ、財政が厳しい留学生用で企画したから、安い分市販パソコンに比べると使い勝手とか性能的がちょっと落ちるけれど、いい?」
そのあたりはパンフレットに書いてあったので了解済みだ。
「授業等で使えれば問題無いです。今はネットを見る端末もない状況ですし」
「あら、なら急いだ方よさそうですね」
そう言って綱島先輩が立ち上がる。
「工房行って直接渡してきますわ」
「なら沙知、お願いしますね」
「ええ」
綱島先輩は私の方へ歩いてくる。
「作業は下の工房の方でやっているわ。一緒に行きましょう」
「お願いします」
頭を下げる。
部屋を出たところでふと思い出した。
「昨日の夕御飯、ありがとうございました。美味しかったです」
「いえいえ、私も一人だと寂しいですしね」
「ところであのパン屋さん、お知り合いなんですか」
「先輩ですわ、この学校の。奥さんの方は元学生会役員ですし」
魔技高専を出てパン屋と菓子屋か。
何かそれもちょっと私の常識だとわからない世界だ。
何か勿体ないような気がする。
確かにパンもケーキも、おまけで貰った豆大福もとっても美味しかったけれど。
「ところであのパソコンを買うという事は、ひょっとして結構苦労しているのでしょうか。言いたくなければ言わなくていいですけれど」
どうしようかな、と思う。
苦労しているかというと微妙だ。
別に今まで食事に困ったとかそういう事は無い。
生命の危機とかそういうのもない。
単に色々とあわなくて逃げてきただけだ。
ただ金銭的に苦労していないかというと、少なくとも今はちょっと苦労している。
だから。
「苦労とは言えないけれど、ちょっと親に色々頼りたくない状況です」
こんな感じにとどめておく。
「そうですか」
先輩はそう言ってちょっと何か考えているようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます