第14話 私は特別じゃない
「植野さんは何故、攻撃魔法関係の研究会に入ろうと思ったのですか」
「
前野さんがにこりと笑う。
「いいですね。それでは宜しくお願いしますね、亜理寿」
「ああ。よろしくな、美紀。絵里も律花もよろしくな」
「ええ」
私も頷く。
「さて、私が攻撃魔法関係の研究会に入りたい理由は簡単。去年ここに入った先輩にちょっとばかり借りがあってさ。出来ればあの人より強くなりたい。そんな感じ」
「その方って攻撃魔法科なのですか」
亜理寿が首を横に振る。
「いいや、何故か知らないけれど魔法工学科。でも攻撃魔法をやめた訳じゃないらしい。むしろ新しい魔法をマスターしてとんでもなく強くなっているようだ。で、負けていられない訳でさ」
「その方と同じ研究会に入るのですの」
亜理寿が再び首を横に振る。
「いいや。あの人は攻撃魔法関係の研究会に入っていない。それにここの学生の集団で最強なのは攻撃魔法関係の研究会じゃない。学生会幹部有志一同らしいんだ」
え、何それ。
前野さん、いや美紀もえっ?という顔をしている。
でも絵里は知っていたようだ。
「学生会のWebの方に戦績表がありましたね。昨年度の学生会館部有志対各研究会選抜部隊の模擬試合結果って」
「ああ。ご丁寧に毎回の戦況概略もついてさ。学生会幹部有志、うち攻撃魔法科は全員揃っても4人で、他の科が2~3人混じるらしいけれどさ。研究会選抜12人相手で8対2で学生会側の勝ち越しだそうだ」
「何なんですの。その武闘派学生会幹部は?」
「凶悪なのが揃っているんだと」
「だったら逆に学生会に入った方がいいんじゃないかしら」
「あの人と同じ場所なのは嫌なんだ。あくまで別の場所で鍛えて、そして並ぶくらいには強くなりたい」
「うーん、だったら攻撃魔法科を選べばよかったのではないですか?」
「あの人は魔法工学科だしさ。だったら私も攻撃魔法科でも魔法工学科でもない場所で、それでいて強さを極めないと対等にはなれない気がして」
なるほど。
亜理寿に関しては逃げてきたを訂正。
むしろ追いかけてきたのだろう、あの人とやらを。
うーん、面白い。
でもそうか。
学生会に入るという案もあったのか。
確かにここの学生会は研究会と同じ感じで希望者が入る制度だった。
でもそんな選択肢は考えていなかったな。
「何なら美紀は学生会に入ったらいいんじゃないか。私はそういう因縁があるから無理だけれど。確かに強いことは確からしいぜ」
「私は学生会とか生徒会とかとはもう関わりたくないんです。今までの経験からの偏見だとはわかっていますけれど」
「なら美紀は私と同じという事か。律花はどうする」
「私は少し考えてみるわ。攻撃魔法というタイプでもないし」
「何気に強そうだけれどな。イメージだけれど何か独りで戦ってきたという感じで」
ぎくっ。
亜理寿、思った以上に鋭いようだ。
「田舎で魔法を練習するような場も教えてくれるような人もいませんでしたし。何とかここに合格できる程度の治療魔法と、あとは掃除程度に使える熱魔法くらいです」
「つまり本気になれば攻撃系統の火魔法も使えない訳じゃない、って事か。まあいいけどさ」
あ、ばれた。
こういう処で私の人付き合いスキルの低さが出てしまう訳だ。
まあここは魔法使いが過半数の特区だからいいけれど。
そう、ここなら私は特別じゃない。
きっと
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