第16話 学生会の魔法工房

 階段を降りて近くの出口を出ると、斜め前くらいが学生会の工房だ。

 右側の鉄工所みたいな場所で5人程作業をしている。


 パソコンに向かって何やらやっている女子学生1人。

 作業台に並んだ大量のパソコンを前に魔法杖構えて何かやっている男子学生3人。

 奥で梱包資材や紙の仕分け等の作業をしている女子学生1人という感じだ。


「エイダ、お客さんだけれど1台大丈夫?」

 パソコンに向かっていた女子学生がこっちを振り返る。

 この人は見覚えがある。

 綱島先輩が投げたゴルフボールを受け止めて、握りつぶしたあの女性だ。

 そう言えばあのときもエイダって読んでいたな。


「1台なら大丈夫です。あと6台在庫がありますから」

「とすると残り5台か。追加で仕入れた方がいいんですかね」

 中には20台以上の同じ型のノートパソコンが並んでいる。

 そしてオリエンテーションで見覚えある学生が魔法杖持って作業をしている。

 これってひょっとして……


「このパソコンって、学生会が販売していた訳ですか」

 エイダと呼ばれた先輩が答えてくれる。

「表向きはOBの会社です。企業のリース切れで出た安価な中古パソコンをOBの会社に買って貰って、作業をこちらでする代わりに格安で販売しているんです。昨年のアンケートで安いパソコンが欲しいという意見が留学生中心に多かったので。今年は試しに40台仕入れました」


「中古パソコンですけれど工作魔法で全ての部品を新品同様に復元していますからね。ソフトだけは諸事情でフリーのLinux等を使っていますけれど」

 綱島先輩が追加説明。

 確かにどのパソコンも中古には見えない。

 工作魔法とは修理とか機械工作をする魔法だと聞いていた。

 でもこんな事にも使えるのか。


 エイダと呼ばれていた女性のスマホがリンリンと鳴る。

「留学生会から5台追加注文です。どうしましょう。もう在庫これで終わりです」


「オサム先輩の事デス。何台かこっそり在庫していると思うデス。連絡取るデス」

 でっかい金髪白人の男子学生がそう言ってスマホを操作し、なにやら話し始めた。


「在庫あるそうデス。10台、詩織先輩便で来るそうデス」


「毎度なのですよ」

 いきなり台車を押した女の子が現れた。

 間違いなく誰もいなかった場所なのに。

 今のはひょっとして瞬間移動?

 そんな魔法は聞いた事が無い。

 でも誰も驚いていないところをみると、やはり魔法なのだろう。


「これで島にある在庫は全部なのだそうですよ。足りなければ本土に連絡して手配するそうなのです」

「詩織先輩、ありがとうデス」

 金髪白人が台車に乗っていたプラスチックコンテナ2個を作業台へ。

 という事はこの女の子は先輩なのか。

 中学生くらいにしか見えないけれど。


「それでは私はこれで失礼するのです」

 詩織先輩と呼ばれた女の子は台車を押した状態のままふっと姿を消した。

 間違いなくいたはずなのに何も残っていない。

 ただプラスチックコンテナ2個が今のが夢でない事を示している。

 さすが魔技高専の学生会。


「あ、今の移動魔法はオフレコでお願いしますね。一般的な魔法ではないので」

 綱島先輩からそう注意が入った。

 なるほど、やっぱり移動魔法だった訳か。


「わかりました。誰にも言いません」

「お願いしますね」


「それより何か手伝えることがあれば手伝いましょうか」

 つい言ってしまう。

 何か工房の方は忙しそうだ。


 それにしても今の私、妙に積極的。

 そんな性格ではなかったのだけれど。

 少なくとも地元にいたときは


「大丈夫ですよ。それに皆さん魔法を使って作業をしていますし」

 そう言う綱島先輩へあの大きい金髪白人の先輩が。


「沙知サン、学生会室に戻ったら愛希サンにこっちに来てくれるよう話してくれませんデスか。青葉サンの魔法は梱包材相手にはあまり相性良くないデス」

 梱包材というとあのプチプチか。

 あれならば……

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