第13話 努力の成果
本日は我ながら頑張ったと思う。
クラス内に話しかけられる同級生を作る事に成功した。
それも3人。
きっかけは簡単。
後の席に座っていた女子学生が例の研究会案内冊子を見ていたので、
「何か良さそうな研究会とかありそう?」
と話しかけただけだけ。
「うーん、今の段階では決定力に欠ける感じでしょうか。橘さんはどう思いますか」
「私もそう思うわ。難しいわよね」
でその場の会話自体は終了。
それでもそれがきっかけで。
お昼は彼女他2人と一緒にカフェテリアで食べ、その場で話もそこそこした。
私が最初に話しかけたちょい太めの女の子は外川絵里さん。
そこそこ有名なお嬢様学校から来たそうだ。
確かに雰囲気もそんな感じ。
「正直学校が息苦しいので脱出してきたのですわ」
「その割に言葉が馬鹿丁寧なままじゃん」
「無理して直すのも癪なのです。ですから自然に治るに任せるつもりですの」
で、今突っ込みを入れた小柄な女の子が植野亜理寿。
術式学園の魔法専科からだそうだ。
「なら特に無理してここ来なくても魔法できるじゃないの」
「こっちの方が魔法のレベルが高いから揉まれてこいって勧められてさ。それにこっちの方が完全個室だし自由そうじゃん」
「でもここだと自由と言っても遊ぶ場所が無いですわ」
「術科学園も山奥で何も無いから同じ。なら少しでも自由な方がいいじゃん」
そして3人目は前野美紀さん。
身長が高く黒髪長髪でほっそりした無口な女の子。
話を聞くと超優秀な名門大学付属から来たらしい。
「それってさすがに勿体なくないか」
「大学までエスカレーターですしね。世間的な評価も魔技大よりまだ上でしょうし」
私も頷く。
「まあそうですけれど。ちょっと余分な物を掃除したくて」
その言葉で詳細は別として、彼女がここに来た理由は何となくイメージできた。
うん、私以外の3人も逃げてきたんだな。
逃げてきたモノも背景もそれぞれ違うけれど。
3人は秋の学園祭で学校見学をした際に知り合ったそうだ。
泊まった部屋が相部屋だったとの事。
ただあえて連絡は取り合っていなかったそうだ。
無事に同じクラスで再会できたけれど。
「まあ補助魔法科で医療専攻希望なら同じクラスになる可能性が高いですしね」
補助魔法科A組は医療専攻希望のみ。
そしてB組は半数が医療以外の補助魔法専攻希望。
レーダーとか教育系とか。
だから医療専攻希望者は合格すればA組になる可能性がB組と比べ2倍程高い。
「そう言えば皆さん、研究会とかはどうしますか」
前野さんがこの話題を持ち出した。
「今の段階では決定力に欠ける感じですわね。前野さんは何か考えてますの」
「ええ、出来れば攻撃魔法関係のどれかに入ろうかと」
「ええっ」
驚く外川さんとにやりとする植野さん。
私としては外川さんと同意見に近い。
前野さんとイメージが色々違いすぎる。
「参考までに何故そう思うのか、聞いていいかい」
植野さんがそう尋ねる。
「少し私自身を鍛えたいんです。精神的にも体力的にも」
「いいね、何なら一緒に探してみるか」
「いいんですか」
植野さんが頷く。
「私もそのつもりだったしね」
ここは攻撃魔法科ではないのだけれども。
でも前野さんの気持ちは少しだけ想像がつく。
おそらく鍛えたいというのは、『余分な物を掃除したくて』ここに来た理由と繋がっているのだろう。
背景は何も聞いていない。
でもそんな感じがする。
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