第59話Regrets - 未練
59.
"Regret the my past. 過去を悔いる4"
== 眞奈の父親(松本浩志) + 藤原紀子(浩志の部下) ==
当時中途入社で入ってきたのですでに既婚だった藤原紀子だった。
控えめな性格ながら元気はつらつな様子で仕事を張り切っていた藤原が
入社後半年ほど経った頃から、沈みがちになっていった。
落ち込んでいるのが誰の目にも分かる程で、けれどいち上司の私には
どうすることも出来なくて、もどかしい思いをしていた。
そんな中、ある日のこと、2~3人残業していた部下にもう帰るよう
号令をかけ社を出たのだが、私は車のKeyを机のいつもの場所に忘れたことを
思い出し、社屋に舞い戻ったことがあった。
もう誰も彼も帰っただろうと思っていたのに藤原だけがまだ
残っていた。
早く帰りなさいと声をかけ、私は出口に向かおうとした一瞬彼女の
泣き顔が目に入ったのだった。
時間帯とシチュエーションがいつもと同じなら聞かずにスルーしている
ひと言を私は発していた。
「最近元気ないよね? 何かあった?
俺が力になれることがあったら相談してみて」と。
若気の至りとはいえ、力になんてなれるはずもないのに何で
あんな期待を持たせるようなことを簡単に口に出したのだろう。
あの時の彼女の境遇を思えば、待ってましたとばかりの
渡りに船とまではいかなくとも、藁をも縋る救いの言葉に聞こえたに
違いなかった。
目に涙を溜めた藤原はぽつぽつ話始めた。
要するに夫が冷たい態度をとるようになり、しばらくの間理由を探して
いて、そのことでさえ辛かったのに、昨日は酔って帰った夫から
堂々とお前などもう愛してない、いらない、だから一緒に暮らす意味も
無い、離婚してくれ・・と言われたのだとか。
「何が何だかもう分からなくて」と彼女は言った。
訳が分からない?
一体どこが?と私はその時思った。
ちゃんと冷静に彼女の夫の言い草を分析してみれば理由はいわずもがな
であった。
おそらくは、他所に好きな女ができたのだ。
だが私は直球を彼女に投げられるほどの無神経さは持ち合わせてなかった
為、話を聞くことしかできなかった。
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